痛みが続くと死亡率が上がる?慢性疼痛と健康リスクの本当の関係

痛みが長く続くと死亡率が上がるのでは?と不安になる方へ

「このままずっと痛みが続くのでは…」
「体のどこかが悪いままなのでは…」

慢性的な痛みを抱えていると、こうした不安が頭をよぎることは少なくありません。
そして最近では、「慢性疼痛があると死亡率が高い」という話を目にすることもあるかもしれません。

少し立ち止まって考えてみましょう。
それは“痛みそのものが命を縮める”という意味なのでしょうか。

少し安心していただきたいのは、
痛みがあること自体が直接寿命を縮めるわけではない、という点です。


「痛み=損傷が続いている」という誤解

一般的には、
「痛みが続く=体のどこかが壊れ続けている」
と考えられがちです。

しかし、少し意外かもしれませんが、
慢性疼痛の多くは“損傷の問題”だけでは説明できません。

近年では、
痛みは脳の予測や安全性の判断によって作られる側面がある
と考えられています。

つまり、
痛み=ダメージの量
ではなく、
痛み=体の危険サインの出し方
という見方です。


慢性疼痛は“命に関わる問題”である可能性があります

いくつかの研究では、慢性疼痛を持つ人の死亡率が高い傾向が示唆されています。

■臨床的観察

慢性的な痛みを抱えている方は、
・運動量の低下
・睡眠の質の低下
・食生活の乱れ
・ストレスの増加
といった状態が重なりやすい傾向があります。

■研究による補強

・88,460人を対象としたコホート研究では、50歳以上の新規筋骨格系症状受診者、とくに背部痛や股関節痛を呈した患者で、その後の死亡率およびがん記録率の上昇が報告されている。
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC2828857/

・6,569人を対象とした前向きコホート研究では、慢性広範囲疼痛を有する人は、約9年間の追跡において全死亡リスクが約20〜30%高いことが報告されている。
https://www.bmj.com/content/323/7314/662

・約6,900人を対象とした前向きコホート研究では、慢性疼痛の中でも特に重度の慢性疼痛を有する人は、約10年間の追跡において死亡リスクが有意に高いことが示されました。
この関連は、年齢・性別・社会経済要因などを調整後も持続しており、慢性疼痛が単なる症状にとどまらず、長期的な健康リスクと関連する可能性が示唆されています。
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1090380109001554

・1,609名を最大14年間追跡した研究では、広範囲の慢性疼痛を持つ人で死亡率の上昇が確認されています。
慢性的な痛みは単なる不快症状ではなく、長期的な健康や生命予後にも関わる可能性が示されています。
https://www.tandfonline.com/doi/abs/10.3109/09638280902874154

つまり、慢性的な痛みは「不快な症状」ではなく、「将来の健康リスク」としても注目されています。

数千人規模の複数の長期研究において、慢性疼痛を持つ人は死亡リスクが高い傾向が一貫して報告されています。
例えば、約6,500人を約9年間追跡した研究では死亡リスクが20〜30%増加。
また、約6,900人の研究では重度の慢性疼痛で死亡リスク上昇、さらに1,600人規模の14年追跡研究でも同様の関連が確認されています。

こうした結果は、慢性疼痛を早期から適切にケアする重要性を示しています。
だからこそ、痛みを放置せず、早期に適切な対応を行うことが重要です。

研究では慢性疼痛と健康リスクの関連が示されていますが、実際の状態は人それぞれ異なります。
当院では、エビデンスを踏まえつつ、お一人おひとりの状態に合わせた対応を大切にしています。

■研究の限界

ただしこれらは「関連」を示すものであり、
痛みそのものが直接寿命を縮めると断定するものではありません。

生活習慣や心理的要因など、多くの要素が影響している可能性があります。

■実務的な解釈

ここで大切なのは、
「痛み=危険」ではなく
「痛みと一緒に起きている生活の変化」に目を向けることです。


痛みは“火事”に似ているかもしれません

臨床ではよくこう考えます。

・急性痛=ボヤ
・慢性痛=延焼

ボヤのうちに対処できればシンプルですが、
延焼してしまうと「火そのもの」ではなく、
燃え広がる環境(ストレス・生活・思考)への対応が重要になります。

大丈夫です。
できることはたくさんあります。


日本ではまだ十分に知られていない視点

日本では今でも、
「痛みは歪みや変形が原因」と考えられることが多いのが現状です。

滋賀医科大学ペインクリニックの情報でも、
日本の痛み治療は遅れていると指摘されています。

「日本では痛みの治療は、先進国の中では最も遅れており、痛みの治療など、患者中心の医療は、厚生労働省の調べで、日本が世界で遅れている科学技術のトップ10に入っていると報告されています。」

http://shiga-anesth.jp/pain/P15.htm

一方で、
NHKスペシャル「腰痛治療革命」などをきっかけに、
痛みと脳の関係は徐々に知られるようになってきました。
http://www.nhk.or.jp/kenko/nspyotsu/


実際の臨床ではこんな変化が起きています

・何年も続いた痛みが、数回で軽減する
・原因不明と言われた痛みが改善する

こうしたケースは珍しくありません。

つまり、
慢性疼痛=一生続くものではないということです。

大丈夫です。よくあることです。


改善のために見ていきたいポイントと考え方の転換

無理にすべてを変える必要はありませんが、
次のような視点はヒントになります。

  • 痛みに対する捉え方(誤解の修正)
  • 運動量や日常活動
  • 睡眠の質
  • 食生活
  • 低体温(平熱36.0℃以下)
  • ストレスや人間関係
  • 身の回りの化学物質(洗剤・柔軟剤など)

ひとりで難しい場合は、医療機関に相談するのも自然な選択です。

痛みの改善は、
施術だけで完結するものではなく、

体・脳・生活のバランスを整えるプロセス
とも言えます。

少し意外かもしれませんが、
慢性疼痛は「理解が進むほど変化しやすい状態」でもあります。


まとめ

慢性疼痛と死亡率の関連は、確かに研究で示唆されています。

しかしそれは、
「痛み=危険な状態」ではなく、

痛みを取り巻く生活や状態の変化が影響している可能性がある
という理解が現実的です。

少し見方を変えるだけで、できることは増えていきます。

そして、痛みは変わる可能性があります。

慢性疼痛は、適切に整理していくことで変化していく可能性があります。
ただ、ひとりで抱えるには少し複雑な側面もあります。
もし難しさを感じる場合は、医療機関で一度整理してみることも一つの方法です。
当院でも、こうした痛みに対するご相談、施術をお受けしています。


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