腰椎椎間板ヘルニアと言われると、「飛び出した椎間板が神経を圧迫しているから痛い」「このままでは歩けなくなるのではないか」と不安になる方も少なくありません。
腰椎椎間板ヘルニアが、腰痛や足の痛み、しびれ、筋力低下などを起こすことはあると言われています。
しかし、MRIにヘルニアが写っていることと、現在の痛みがすべてヘルニアから生じていることは、同じではありません。
病名を否定するのではなく、画像、症状、神経の状態、関節の動き、筋肉や筋膜などを一緒に確認し、痛みの内訳を整理することが大切です。
腰椎椎間板ヘルニアとは
椎間板は、背骨と背骨の間でクッションのような役割をしています。
その内部にある髄核などの組織が後方へ突出・脱出した状態が、椎間板ヘルニアです。
突出した組織によって神経根に圧迫や炎症などが生じると、お尻から足にかけて痛みやしびれが現れることがあると言われています。
主な症状には、次のようなものがあります。
- 腰やお尻の痛み
- お尻から太もも、すね、足先へ走る痛み
- 足のしびれや感覚の低下
- 足に力が入りにくい
- 咳やくしゃみ、前かがみなどで症状が強くなる
ただし、同じような画像所見があっても、症状の有無や程度には大きな個人差があります。
無症状でもMRIにヘルニアが写ることがあります
MRIにヘルニアが写っていると、それが痛みの原因だと思ってしまいますよね。
ところが、腰痛や坐骨神経痛のない人を調べても、椎間板の突出やヘルニアは珍しくありません。
1995年にボルボ賞を受賞したBoosらの研究では、手術を必要とするほどの腰痛・坐骨神経痛がある46人と、年齢、性別、腰への職業的負担などをそろえた無症状者46人を比較しています。
その結果、無症状者の76%にも椎間板ヘルニアが認められました。有症状者では96%でしたが、小さな椎間板突出に限ると、無症状者にも同程度の画像所見が数多く見つかりました。
また、無症状者3,110人を対象とした複数の研究をまとめた系統的レビューでは、椎間板突出が20歳で29%、80歳で43%に認められました。椎間板の膨隆や変性はさらに多く、年齢とともに増加していました。
日本の一般住民975人をMRIで調べた和歌山脊椎研究でも、腰椎を含む椎間板変性が広く認められています。この研究は無症状者のヘルニアだけを調べたものではありませんが、画像上の変化が一般住民にも多いことを示しています。
MRI画像は重要ですが、画像だけで痛みの発生源を決めることはできない、ということです。
神経は圧迫されるだけで必ず痛むのでしょうか
生理学者の熊澤孝朗先生は、著書『痛みを知る』の中で、次のように述べています。
「神経線維は通常、その末端にある受容器からの信号を伝えるものであって、その途中が興奮を起こしたりするようなことはありません。」 痛みを知る 東方出版 2007
痛みを伝える神経線維は、通常、その末端にある侵害受容器が刺激されたときに興奮し、その情報を中枢へ伝えます。
神経線維の途中から異常な電気信号が発生することを「異所性興奮」といいますが、正常な神経線維では簡単に起こるものではありません。
正常な神経根と、傷害された神経根は同じではありません
滋賀医科大学名誉教授の横田敏勝先生は、著書『臨床医のための痛みのメカニズム』で、神経痛と神経根痛について次のように説明しています。
痛覚線維の生理的興奮は、その末梢の自由終末にある痛覚受容器(侵害受容器)が刺激されたときにみられる。
自由終末と脊髄を継ぐ部分からインパルスが発生することはめったにない。
痛覚受容器を介さずに神経線維からインパルスが発生することを異所性興奮という。異所性興奮を生じる可能性が高いのは、脱髄部および傷害された末梢神経の側芽と神経腫である。
さらに、神経根痛について次のように述べています。
脊髄後根を圧迫すると神経根痛が出て、圧迫された後根の支配領域に痛みが走るとみられている。しかし、この考えは特別な場合にしか通用しない。
たとえば、脱髄線維を含む脊髄後根への機械刺激は神経根痛を誘発するが、正常な脊髄神経根の圧迫は痛みを生じない。
実験動物の正常な脊髄後根を圧迫しても、痛みを伝える侵害受容線維を含めた求心性線維の持続的発射活動は誘発されない。しかし、あらかじめ傷害しておいた脊髄後根を機械刺激すると、持続的なスパイク発射が誘発される。
バルーンカテーテルを使って正常人の脊髄神経根を圧迫すると、錯感覚と感覚鈍麻が誘発されるが、痛みは出ない。
正常な脊髄後根を牽引しても痛くない。しかし、傷害歴のある脊髄神経根を圧迫したり牽引したりすると、特徴的な神経根痛が走る。
臨床医のための痛みのメカニズム 南江堂 1997
Kuslichらは1991年、局所麻酔下で腰椎椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症の手術を受けた193人を対象に、さまざまな組織を刺激して、どのような感覚が生じるかを調べました。
その報告では、正常な神経根に触れても痛みは誘発されず、圧迫や炎症などの影響を受けている神経根への刺激では、下肢へ走る痛みが再現されることがありました。
つまり、単に「神経が押されているから痛い」と考えるだけでは不十分です。
正常な神経根への単純な圧迫と、炎症、虚血、脱髄などの影響を受けた神経根への刺激は、分けて考える必要があります。
ヘルニアを否定する話ではありません
ここまでの説明は、「椎間板ヘルニアでは痛みが出ない」という意味ではありません。
椎間板ヘルニアによって神経根に圧迫、炎症、血流低下などが生じれば、神経根痛、しびれ、感覚低下、筋力低下などが現れることがあります。
一方で、MRIにヘルニアが写っているだけで、現在の腰痛や足の痛みをすべて説明できるとは限りません。
画像所見と症状の出る場所、筋力、感覚、反射、身体の動きなどが一致しているかを確認する必要があります。

Patrick Wallが指摘した「画像と痛みの違い」
ゲートコントロール説で知られるPatrick Wallは、著書『疼痛学序説』において、椎間板ヘルニアと腰痛の関係について問題を提起しています。
「腰痛の原因は椎間板ヘルニアであると、ふつう信じられている。椎間円板は椎骨の間から突出して、感覚線維を含む脊髄後根を圧迫すると信じられている。
椎間板ヘルニアの頻度は、痛みをもつ人たちともたない人たちで同じである。椎間板ヘルニアがあって痛みをもつ人々が、外科手術以外の方法で治療されると椎間円板の突出した部分は消えたり、消えなかったりする。しかしこれは、まだ痛いか、それとも痛くないかに関係しない。」
pain:The Science of Suffering(Maps of the Mind) Patrick D. Wall 2000
Wallの記述には、出版当時の研究状況や手術事情を背景にした強い表現も含まれています。
また、現在、椎間板ヘルニアの確認には主にMRIが用いられ、通常のレントゲン写真だけでヘルニアそのものを直接確認することはできません。
それでも、「画像上の異常と、患者さんが感じている痛みを同一視してはいけない」という指摘は、現在でも重要です。
腰痛や足の痛みには、別の痛みが重なることが多くあります
腰や足に痛みがあるからといって、そのすべてが神経根痛とは限りません。
実際には、次のような痛みが関係したり、椎間板ヘルニアによる症状と重なったりすることがあります。
筋膜性疼痛症候群(MPS)
腰、お尻、股関節周囲、太ももなどの筋肉や筋膜に痛みが生じる状態です。
筋肉の中に強い圧痛部位があり、そこを刺激すると、普段感じている腰痛や足の痛みが再現されることがあります。お尻の筋肉などから、太ももやふくらはぎへ関連痛が広がることもあります。
関節機能障害による痛み
腰椎、骨盤、股関節などの動きが悪くなり、関節や周囲の組織から痛みが生じることがあります。
関節由来の痛みも、腰だけでなく、お尻や太ももなど離れた場所へ関連痛として感じられることがあります。
筋膜性疼痛や関節機能障害は、椎間板ヘルニアと二者択一ではありません。
神経根への影響、筋肉・筋膜の痛み、関節の機能異常が重なっている場合もあります。
早めに整形外科へ相談したい症状
次のような症状がある場合は、接骨院での施術よりも医療機関での確認を優先してください。
- 尿が出にくい、または尿や便を漏らしてしまう
- 股の間や肛門周囲の感覚が鈍い
- 足の筋力低下が急に現れた、または悪化している
- 両足に強いしびれや脱力がある
- 発熱、強い夜間痛、大きな外傷などを伴う
- 痛みや神経症状が急速に悪化している
これらは、馬尾症候群や重い神経障害などを考慮する必要があるためです。
おおしま接骨院で確認すること
医療機関で受けた説明や検査結果を尊重したうえで、おおしま接骨院では、施術の対象となる筋肉・筋膜や関節の動き、姿勢・動作などを確認します。
特に、次のような点を見ていきます。
- 腰や骨盤、股関節の動き
- 腰、お尻、太ももなどの筋肉・筋膜の状態
- 筋肉を押したときに、普段感じている痛みが再現されるか
- 前かがみ、立ち上がり、歩行などで痛みがどう変化するか
- 日常生活で困っている動作
- 痛みへの不安や、痛みを避けることで減ってしまった活動
足の筋力低下や感覚の変化など、医療機関での確認が必要と思われる状態がある場合は、そちらへの相談を優先していただきます。
一方、筋膜性疼痛症候群や関節機能障害による痛みが重なっている可能性があれば、筋肉・筋膜や関節の動きに対応し、痛みを軽くして動きやすい状態を目指します。
まとめ
MRIに腰椎椎間板ヘルニアが写っていても、それだけで現在の痛みのすべてを説明できるとは限りません。
大切なのは、ヘルニアという病名を否定することでも、画像所見を軽視することでもありません。
神経根への影響、筋力や感覚の変化、筋肉・筋膜、関節の動き、生活の中で痛みが出る場面などを一緒に確認し、痛みの内訳を整理することです。
蓮田市で、腰椎椎間板ヘルニアと言われたあとも腰痛や足の痛みが続いている方は、おおしま接骨院へご相談ください。
医療機関での確認が必要な場合はそちらを優先しながら、痛みを軽くし、安心して動ける状態と自己管理を目指していきます。





