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異常なしと言われたのに痛い。その不安はよくあることです
「レントゲンやMRIでは問題ないと言われたのに、首・肩・背中・腰の痛みが続く」
「原因が分からないまま、湿布やマッサージを繰り返している」
「異常がないなら、この痛みは気のせいなのか」と不安になる。
このような悩みは、決して珍しいものではありません。
まず大切なのは、“異常なし=痛みが存在しない”ではないということです。
筋膜性疼痛症候群、いわゆるMPSは、画像検査だけで確定しやすい骨折や腫瘍のようなものとは少し違います。問診、触診、痛みの広がり方、動きによる変化などを合わせて見ていくことが多い痛みです。MPSは、筋肉内の過敏なポイント、局所の痛み、関連痛などと関連して説明されることがあります。MPSの診断は主に臨床評価で行われ、画像検査などは他の病気を除外する目的で使われることがあるとされています。
筋膜性疼痛症候群(MPS)とは?
筋肉や筋膜まわりに痛みが出る状態
筋膜性疼痛症候群という名前を聞くと、少し難しく感じるかもしれません。
ただ、簡単に言えば、筋肉や筋膜まわりが敏感になり、痛みが続きやすくなっている状態と考えると分かりやすいかもしれません。
MPSでは、筋肉や筋膜、周囲の軟部組織に関連する痛みが見られることがあります。特徴として、押すとその場所だけでなく、少し離れた場所まで痛みが広がるようなポイントが関係することがあります。これを一般に、トリガーポイントと呼ぶことがあります。
トリガーポイントは、筋肉の硬く張った部分の中にある過敏な点として説明され、押したときの痛みや関連痛と結びつけて語られることがあります。専門家の合意研究では、トリガーポイントの評価では「硬く張った帯状の部分」「過敏な点」「関連痛」が重要な所見として提案されています。
よくある誤解|痛い場所に必ず損傷があるとは限らない
「痛い=壊れている」と考えると不安が強くなる
痛みがあると、多くの方は「骨が悪いのでは」「神経が傷ついているのでは」「筋膜が癒着しているのでは」と考えます。
もちろん、必要な検査で重大な病気や外傷を確認することは大切です。そこを軽く見る必要はありません。
ただし、検査で大きな異常が見つからない痛みでは、組織の損傷そのものよりも、筋肉・神経・脳の警戒反応が痛みに関係していることがあります。
ここで一度、考え方を少し変えてみてもよいかもしれません。
痛みは「体が壊れている証拠」ではなく、体が守ろうとしているサインとして出ていることもあります。
この視点を持てるだけでも、「痛いから悪化しているに違いない」という不安が少しやわらぐことがあります。
MPSと「異常なし」の痛みが関係する理由
画像に写りにくい“過敏さ”がある
MPSは、MRIやレントゲンで分かりやすく写る骨折や腫瘍とは性質が異なります。
筋肉の緊張、押したときの痛み、関連痛、動きによる変化、生活の中で悪化しやすい場面などを総合して見ていくことが多い状態です。
そのため、「画像では異常なし」と言われても、筋肉や神経系の過敏さがまったくない、という意味にはなりません。
脳が「危ない」と予測すると痛みが続くことがある
少し意外かもしれませんが、痛みは筋肉だけで作られているわけではありません。
過去の痛みの経験、睡眠不足、ストレス、姿勢への不安、仕事や生活環境などが重なると、脳や神経系が「この動きは危ないかもしれない」と予測しやすくなります。
このような状態では、実際には大きな損傷がなくても、体が防御モードに入りやすくなります。
たとえば、肩を少し動かしただけで「また痛くなるかも」と感じる。
腰を曲げる前から体が緊張する。
背中の張りを感じると、そこばかり気になってしまう。
こうした反応は、気のせいではありません。
脳と体が、少し過敏に守ろうとしている状態と考えると自然です。
たとえば、こんなケースがあります
肩こり・背中の痛みで「異常なし」と言われた例
たとえば、デスクワークが多い方を考えてみます。
肩や背中が常に重く、病院では骨や神経に大きな異常はないと言われた。
マッサージ直後は少し楽になるけれど、数日でまた戻ってしまう。
忙しい時期や睡眠不足の日に悪化しやすく、痛い部分を押すと首や腕の方まで響くことがある。
このような場合、単に「筋肉が硬い」だけで説明しきれないことがあります。
筋肉まわりの過敏さ。
痛みに対する警戒。
睡眠やストレスの影響。
長時間同じ姿勢が続く生活リズム。
これらが重なることで、痛みが続きやすくなっている可能性があります。
つまりMPSは、「コリの重症版」とだけ考えるよりも、体と脳の防御反応が重なった状態として見る方が、改善の糸口を見つけやすいことがあります。
ここで大事なのは、痛い場所を責めすぎないことです。
研究ではどこまで分かっているのか
MPSは身体だけでなく、心理・社会的要因も関係しやすい
臨床では、MPSのような痛みは「押すと痛い場所があるか」だけではなく、睡眠、ストレス、仕事量、不安、動作への恐怖感などと一緒に見ていくことが大切だと感じます。
論文でも、MPSやトリガーポイントについては研究が進んでいる一方、診断基準や病態の理解にはまだ議論が残るとされています。MPSは局所の筋肉だけの問題としてではなく、痛みの入力、神経系の反応、生活背景などを含めて整理する必要があると考えられます。
実務的には、検査で異常がない痛みでも、体の使い方、睡眠、ストレス、痛みへの不安、動作への恐怖感などを整理すると、改善のきっかけが見つかることが多々あります。
MPSは改善できる可能性があります
痛い場所だけを責めすぎないことが大切
MPSのような痛みでは、痛い場所を強く押す、硬いところを無理に伸ばす、姿勢を完璧に直そうとするだけでは、かえって体が警戒することもあります。
もちろん、マッサージやストレッチで楽になる方もいます。
ただ、それだけで戻ってしまう場合は、「なぜ体がまた警戒してしまうのか」を見ていくことも大切です。
安心できる範囲で動く。
睡眠を整える。
負担のかかる動作を少し見直す。
痛みに対する理解を深める。
こうした積み重ねによって、神経系の警戒が少しずつ落ち着いていくことがあります。
大丈夫です。
「異常がないのに痛い」という状態は、決して珍しいものではありません。
そしてそれは、「どうしようもない痛み」という意味でもありません。
まず何をすればいい?無理のない対処法
痛みを消そうとしすぎず、安心して動ける範囲を探す
最初から痛みをゼロにしようとすると、かえって体の反応に敏感になりすぎることがあります。
まずは、痛みが強くならない範囲で肩や腰をゆっくり動かしてみる。
長時間同じ姿勢を避け、小さく姿勢を変える。
「痛い動き=悪化」と決めつけすぎない。
睡眠不足や緊張が続いていないか振り返る。
不安が強い場合は、痛みを専門的に見られる場所で相談する。
このくらいの小さな見直しからで十分です。
少し意外かもしれませんが、体は「正しい姿勢」だけで安心するわけではありません。
むしろ、少しずつ動ける経験を積むことで、「この動きは危なくない」と学習していくことがあります。
ただし、急な強い痛み、発熱、しびれや麻痺、外傷後の痛み、排尿・排便の異常などがある場合は、自己判断せず医療機関で確認してください。ここは無理に様子を見るところではありません。
まとめ|異常なしでも、痛みには理由があります
筋膜性疼痛症候群(MPS)は、筋肉や筋膜まわりの過敏さ、トリガーポイント、神経系の警戒反応などが関係する痛みとして考えられています。
検査で異常がないと言われても、痛みが気のせいというわけではありません。
大切なのは、痛い部分だけを見るのではなく、体の使い方、生活習慣、不安、睡眠、ストレスなどを含めて整理することです。
その中に、改善のきっかけが見つかることがあります。
首・肩・背中・腰の痛みが続いていて、「異常なしと言われたのに、なぜ痛いのだろう」と悩んでいる方は、痛い場所だけを責めずに、体と脳の警戒を少しずつほどいていく視点を持ってみてください。
それだけでも、痛みとの向き合い方は変わっていくかもしれません。
一人で不安な場合、いつでもご相談ください。








