踵の真ん中が打撲のように痛い|足底脂肪体炎・踵部脂肪体症候群とは
この記事の要点

・踵の中央が打撲のように痛む場合は、踵の脂肪パッドが関係することがあります。
・足底筋膜炎とは、痛む位置や悪化しやすい場面が異なります。
・踵だけでなく、距踵関節や筋膜性疼痛症候群による関連痛も確認することが大切です。

足底脂肪体炎・踵部脂肪体症候群とは

「踵の真ん中が、打撲したようにズーンと痛い」

「硬い床を裸足で歩くと、踵に骨が直接当たるように感じる」

「足底筋膜炎と言われたけれど、朝の一歩目より、長く立っているときの方がつらい」

このような踵の痛みでは、足底筋膜だけでなく、踵の下にある脂肪体が関係していることがあります。

一般には「足底脂肪体炎」と呼ばれることもありますが、医学文献では「踵部脂肪体症候群」や「踵部脂肪体の萎縮・障害」などの表現が使われます。

踵の痛みは、すべて足底筋膜炎とは限りません。

痛む場所、痛みが出る時間帯、どのような動作で悪化するかを丁寧に確認することが大切です。

踵の脂肪体とは

踵の骨である踵骨の下には、厚みのある脂肪組織があります。

この脂肪体は、単に脂肪が集まっているだけではありません。

線維性の隔壁によって小さな区画に分けられ、歩行や着地の際に加わる衝撃を吸収し、踵へかかる圧力を分散するクッションとして働いています。

歩くたびに踵には大きな力が加わりますが、脂肪体が適度に変形することで、踵骨や周囲の組織を守っています。

この脂肪体の弾力性が低下したり、構造が傷ついたり、荷重時に横へ広がりすぎたりすると、踵の中央部に痛みが出ることがあります。

踵部脂肪体症候群でみられやすい症状

踵部脂肪体症候群では、次のような訴えがみられます。

・踵の真ん中が痛い
・打撲したような鈍い痛みがある
・踵の骨が床へ直接当たるように感じる
・裸足で硬い床を歩くと痛い
・長時間立っていると痛みが強くなる
・歩行量が増えるとつらい
・踵の中央を押すと痛い
・両足に症状が出ることがある

足底筋膜症では、朝起きた直後や、しばらく座ったあとに歩き始める「最初の一歩」で痛みが強く、踵のやや内側に圧痛が出る傾向があります。

一方、踵部脂肪体の問題では、踵の中央部に痛みがあり、立ち続けることや硬い床で悪化する傾向が報告されています。

ただし、症状だけで完全に区別できるわけではありません。

足底筋膜と脂肪体の問題が重なっていることもあります。

なぜ踵の脂肪体に問題が起こるのか

踵部脂肪体症候群には、いくつかの要因が関係すると考えられています。

長時間の立ち仕事や歩行

硬い床の上で長時間立つ仕事や、歩行量の増加によって、踵の脂肪体へ繰り返し圧力がかかります。

ランニングやジャンプ動作

踵から強く着地する動作が続くと、脂肪体へ衝撃が集中します。

加齢による弾力性の低下

年齢とともに脂肪体の構造や弾力性が変化し、衝撃を吸収する能力が低下することがあります。

体重増加

踵へかかる荷重が増えるため、脂肪体への負担も大きくなります。

クッション性の低い靴

底が薄い靴や、摩耗した靴を長期間使用していると、踵への衝撃が増えます。

踵を強く打った外傷

高い所からの着地や、硬い物を踏んだあとに、脂肪体が傷つくことがあります。

脂肪体は単純に薄くなるだけでなく、厚みがあっても弾力性が低下していることがあります。
加齢、体重、症状の長期化などと脂肪体の厚さや弾性変化との関連も報告されています。

足底筋膜炎との違い

踵が痛いと、「足底筋膜炎ですね」と説明されることが少なくありません。

しかし、踵痛には複数の原因があります。

足底筋膜症では、一般に踵骨内側部から土踏まずにかけて痛みが出やすく、朝起きた直後の一歩目や、休んだあとに歩き出す際に強く痛む傾向があります。

踵部脂肪体症候群では、踵の中央部が打撲のように痛み、長時間の立位、歩行、硬い床、裸足で悪化しやすい傾向があります。

ただし、この二つは重なる場合もあり、痛みの位置だけで断定することはできません。

画像検査でも、足底部痛がある方には足底筋膜の変化だけでなく、荷重時の脂肪体の厚みや踵骨周辺の変化がみられることがあります。

痛い場所だけが原因とは限りません

ここが、当院で特に大切にしている点です。

踵が痛いからといって、必ずしも踵の脂肪体だけに原因があるとは限りません。

踵には、足部、足関節、膝、股関節、骨盤、体幹から伝わる力が集まります。

身体は一つひとつの筋肉や関節が、完全に独立して動いているわけではありません。

東洋医学には、身体を経路でつながったものとして捉える「経絡」という考え方があります。
西洋医学の分野でも近年、筋肉や筋膜の連続性に注目した「筋膜連鎖」や「アナトミートレイン」と呼ばれる考え方が知られるようになりました。

これらがまったく同じものだと確認されているわけではありませんが、身体を局所だけでなく、つながりの中で捉えるという点には共通する部分があります。

実際の身体では、足部、足関節、膝、股関節、骨盤などが連動して動いています。

そのため、踵が痛い場合でも、痛む踵だけでなく、距踵関節、ふくらはぎ、股関節、仙腸関節などを含めて確認することがあります。

足が地面へ接地するときには、踵骨と距骨の間にある距踵関節、いわゆる距骨下関節が細かく動き、地面の傾きや衝撃を調整しています。

この関節の動きが硬くなったり、左右差が大きくなったりすると、踵の特定部分へ荷重が集中することがあります。

当院の臨床では、踵の中央部に痛みがある方でも、距踵関節の動きや骨盤の仙腸関節を含む関連部位を確認し、それらの機能が整うことで痛みや接地感が変化することがあります。

ただし、これは「仙腸関節が踵部脂肪体症候群の原因である」という意味ではありません。

局所の組織、足部の関節機能、歩行時の荷重、身体全体の連動を分けずに確認することが重要だと考えています。

筋膜性疼痛症候群による関連痛もあります

痛みを感じる場所と、痛みの発生源が一致しないことがあります。

筋肉や筋膜に生じた過敏な部位から、離れた場所へ痛みが広がる現象を関連痛といいます。

ふくらはぎや足部の筋肉に筋膜性疼痛症候群があると、踵や足底へ痛みを感じることがあります。

そのため、踵を押して痛いからといって、すぐに脂肪体そのものの障害と決めつけることはできません。

当院では、痛い踵だけでなく、

・ふくらはぎの筋肉
・足裏の筋肉
・足首周囲
・距踵関節
・膝や股関節
・仙腸関節周辺

なども確認します。

踵を強く揉むのは避けましょう

痛む場所を強く押したり、硬いボールで踵をゴリゴリ刺激したりすると、一時的に気持ちよく感じることがあります。

しかし、脂肪体が傷ついている場合、繰り返し強く刺激すると痛みが増すことがあります。

また、踵骨へ直接荷重がかかるため、裸足で硬い床を歩き続けることも避けた方がよいでしょう。

痛みが強い時期は、

・クッション性のある靴を履く
・硬い床での裸足を避ける
・長時間の立位や歩行を減らす
・急なランニングやジャンプを控える
・踵へ強い刺激を加えない

ことが基本になります。

ヒールカップやインソールによって踵への圧力を分散できる場合もあります。

ただし、踵を高く持ち上げすぎたり、合わないインソールを使ったりすると、別の部位に負担がかかることもあります。

踵の痛みで注意が必要な状態

踵の痛みは、脂肪体や足底筋膜だけで起こるわけではありません。

次のような状態でも、踵に痛みが出ることがあります。

・踵骨の疲労骨折
・足根管症候群
・Baxter神経などの神経絞扼
・アキレス腱付着部の問題
・踵骨周辺の滑液包炎
・炎症性疾患
・感染症
・まれに腫瘍性疾患

踵痛の代表的な鑑別には、足底筋膜症、脂肪体障害、踵骨疲労骨折、神経絞扼などがあります。

次のような場合は、セルフケアだけで様子を見ず、医療機関へ相談してください。

・急に強い痛みが出た
・踵をつけないほど痛い
・腫れや熱感が強い
・夜間や安静時にも強く痛む
・しびれや感覚低下がある
・発熱や全身倦怠感を伴う
・外傷後から痛みが悪化している
・数週間たっても改善しない

当院で確認すること

当院では、踵の中央部が痛いという訴えがあっても、すぐに「脂肪体炎」と決めつけません。

まず、

・どの位置が痛むのか
・朝の一歩目が痛いのか
・長く立つと痛いのか
・裸足や硬い床で悪化するのか
・片側か両側か
・外傷や運動量増加があったか
・しびれや夜間痛がないか
・踵の中央、内側、外側のどこに圧痛があるか

を確認します。

そのうえで、

・踵部脂肪体の状態
・足底筋膜周辺
・距踵関節の動き
・足関節の可動性
・筋膜性疼痛症候群による関連痛
・膝、股関節、仙腸関節との連動
・立位や歩行時の荷重

を確認します。

局所を保護する必要があるのか、関節の機能を整える必要があるのか、筋膜性疼痛症候群への対応が必要なのかは、人によって異なります。

踵だけを強く刺激するのではなく、その方の痛みに関係している部分を探し、痛みを軽くして無理なく動ける状態を目指します。

自宅でできる対策

踵の中央部が痛いときは、まず踵へ繰り返しかかる衝撃を減らします。

硬い床で裸足にならない

自宅のフローリングでも痛む場合は、クッション性のある室内履きを利用してください。

靴の状態を確認する

踵部分がすり減っている靴や、靴底が薄い靴は避けましょう。

歩行量や運動量を一時的に調整する

痛みを我慢して歩き続けると、症状が長引くことがあります。

完全に動かなくなる必要はありませんが、痛みが強くならない範囲へ調整してください。

踵を強く揉まない

硬いボールや器具で、痛む部分を直接強く押すことは避けましょう。

痛みの変化を観察する

朝に強いのか、長時間立った後に強いのか、裸足で悪化するのかを記録すると、状態を管理しやすくなります。

まとめ

踵の真ん中が打撲したように痛む場合、足底筋膜症だけでなく、踵部脂肪体症候群が関係していることがあります。

踵の脂肪体は、歩行や着地時の衝撃を吸収する大切なクッションです。

その弾力性や構造が変化すると、硬い床、裸足、長時間の立位や歩行で、踵の中央部に痛みが出ることがあります。

ただし、踵の痛みがすべて脂肪体から出ているとは限りません。

距踵関節の機能、筋膜性疼痛症候群による関連痛、膝や股関節、仙腸関節を含む身体全体の連動が関係していることもあります。

「足底筋膜炎と言われたけれど、症状の出方が少し違う」

「踵の真ん中が、打撲したように痛い」

「硬い床を歩くと、踵に骨が直接当たるように感じる」

痛みは長く続くと脳が痛みを学習し、慢性痛と言われる状態になることがあります。
お困りの方は当院へお越しください。

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