
- 関節機能異常とは、関節の動きや周囲の筋肉との協調がうまく働いていない状態を表す考え方です
- レントゲンやMRIで明らかな異常が見つからなくても、動作時の痛みや動かしにくさが起こることがあります
- 痛む場所と、機能に問題が生じている関節が一致するとは限りません
- 関節機能異常と筋膜性疼痛症候群(MPS)は、相互に影響し合う場合があります
「画像では異常なし」と言われたのに、なぜ痛いのでしょうか?
「レントゲンでは骨に異常がないと言われたけれど、動かすと痛い」
「MRIを撮っても大きな問題はなかったのに、身体をひねりにくい」
「しばらく座った後に立ち上がると、腰や骨盤が痛む」
このような経験はありませんか。
画像検査で明らかな異常が見つからないと、「何も悪くないのだろうか」「痛みは気のせいなのだろうか」と不安になる方もいらっしゃいます。
しかし、画像検査で主に確認している身体の構造と、実際の動作中に起こる関節の働きは、同じものではありません。
骨折や大きな損傷がなくても、関節の動きや周囲の筋肉との協調に変化が生じることで、痛みや動かしにくさが現れる場合があります。
そのような状態を考える際に用いられるのが、関節機能異常という考え方です。
関節機能異常とは?
関節機能異常とは、関節が壊れている、あるいは骨が大きくずれているという意味ではありません。
関節本来の滑らかな動きや、周囲の筋肉との協調がうまく働いていない状態を表す考え方です。
例えば、次のような変化が考えられます。
- 関節が動く範囲が狭くなっている
- 特定の方向へ動かすと引っかかる
- 左右で動き方が異なる
- 一部の関節が動きにくく、別の場所が代わりに動きすぎている
- 動作時に周囲の筋肉へ過剰に力が入る
- 関節を動かしたときに痛みや違和感が生じる
関節は、単純な蝶番のように一方向だけへ動いているわけではありません。
曲げる、伸ばす、ひねるといった大きな動きに伴って、関節面では小さな滑りや転がりなどが起こっています。
また、関節の動きに合わせて周囲の筋肉が適切なタイミングで働く必要があります。
こうした働きのどこかに変化が生じると、関節そのものに大きな損傷がなくても、身体を動かしにくくなることがあります。
なお、「関節機能異常」は一つの病名を示す言葉ではなく、関節の働きを評価するための臨床的な考え方です。
分野や職種によって、関節機能障害、体性機能障害など、異なる用語が用いられることがあります。
関節の「構造異常」と「機能異常」は違います
関節の状態を考える際には、構造と機能を分けて整理すると理解しやすくなります。
構造異常とは
構造異常には、次のようなものがあります。
- 骨折
- 脱臼
- 明らかな骨の変形
- 靱帯や軟骨の損傷
- 変形性関節症
- 腫瘍や感染症
これらは、レントゲン、CT、MRIなどの画像検査によって確認できる場合があります。
機能異常とは
一方、機能異常で問題になるのは、次のような働きです。
- 関節の動く範囲
- 動く方向
- 左右の動き方の違い
- 荷重したときの反応
- 周囲の筋肉との協調
- 動作に伴う痛みや違和感
構造異常と機能異常は、どちらか一方だけが存在するとは限りません。
骨の変形があっても痛みが少ない場合があれば、画像上の変化が目立たなくても、動作時に強い痛みを感じる場合もあります。
したがって、画像に変形があるから必ず痛む、画像に明らかな異常がないから問題もない、とは限りません。
関節機能異常の考え方は、どのように発展してきたのでしょうか?
関節機能異常という考え方は、ある一人の人物が突然作ったものではありません。
古くから行われてきた徒手療法を土台に、オステオパシーやカイロプラクティック、理学療法などの分野で、関節の動きや周囲の筋肉との関係が研究され、現在のような考え方へ発展してきました。
オステオパシーでは、19世紀後半に提唱された初期の「病変」の考え方が、20世紀を通じて、骨格・関節・筋膜や、それらに関係する神経、血管、リンパ系などの機能変化を含む「体性機能障害」という概念へ発展しました。
その後、整形外科的徒手療法や理学療法の分野でも、単に関節が何度動くかだけではなく、どの方向へ動きにくいのか、周囲の筋肉とどのように協調しているのか、動作によって痛みがどう変化するのかを確認する考え方が発展してきました。
ただし、オステオパシー、カイロプラクティック、理学療法などでは、それぞれ異なる理論や用語が使われてきました。
そのため、「関節機能異常」という言葉の意味や評価方法が、すべての分野で完全に統一されているわけではありません。
現在では、関節を単純に「正しい位置へ戻す」という説明だけではなく、筋肉の働き、神経系の反応、痛みに対する警戒、患者さんの期待や治療環境なども含めた、複合的な視点で考えられるようになっています。
徒手療法の作用も、局所的な機械的変化だけでなく、末梢神経系や中枢神経系を含む複数の反応が関係する可能性が示されています。
なぜレントゲンやMRIでは分かりにくいのですか?
レントゲンやMRIなどの画像検査は、非常に重要な検査です。
骨折、脱臼、変形、腫瘍、炎症、椎間板や靱帯などの損傷を確認するために役立ちます。
一方、関節機能異常を考える際に確認したいのは、主に次のような要素です。
- 身体を動かしているときの関節の動き
- 方向ごとの可動性
- 左右差
- 立位や歩行時の荷重
- 筋肉が働くタイミング
- 特定の動作による症状の変化
通常の画像検査は、横になった状態などで身体の一場面を撮影します。そのため、立ち上がる、歩く、身体をひねるといった動作中の機能を、そのまま評価するものではありません。
したがって、「画像検査では絶対に分からない」ということではなく、画像だけでは関節の働きを十分に評価できない場合があると考えるのが適切です。
画像検査で重大な損傷がないことを確認したうえで、実際の動作や関節の動きも調べることが大切です。
関節機能異常では、どのような症状が出ますか?
関節機能異常が関係している場合、次のような症状がみられることがあります。
- 身体を動かしたときに痛む
- 動き始めだけ痛い
- 一定方向だけ動かしにくい
- 関節が引っかかる、詰まるように感じる
- 関節が抜けた感じ、ハマりが良くない感じがする
- 長時間同じ姿勢を取った後に痛む
- 座った状態から立ち上がると痛い
- 寝返りや起き上がりで痛む
- 周囲の筋肉が繰り返し硬くなる
- 痛む場所が一定しない
- 一度楽になっても、同じ場所へ負担が戻る
- 脱力、上手く力が入らない
ただし、これらは関節機能異常だけに特有の症状ではありません。
筋肉や腱の損傷、神経の問題、炎症性疾患などでも似た症状が起こります。そのため、症状だけで「関節機能異常が原因」と断定することはできません。
痛む場所と、問題のある関節が同じとは限りません
身体の痛みは、問題が生じている場所だけに現れるとは限りません。
関節やその周囲の組織から生じた痛みが、少し離れた場所に感じられることがあります。これを関連痛といいます。
例えば、
- 腰椎や仙腸関節の問題で、お尻や脚の付け根が痛む
- 胸椎や肋骨周辺の関節の問題で、肩甲骨の内側が痛む
- 頚椎や上部胸椎の問題で、首や肩周辺が痛む
- 足部の関節の問題で、足裏や足指の付け根が痛む
といったことがあります。
仙腸関節由来の痛みについても、痛みの広がり方には個人差があり、臀部だけでなく鼠径部などに関連痛が生じる場合があります。
単一の触診や検査だけで確実に特定することは難しく、複数の検査を組み合わせて判断する必要があります。
そのため、痛む一点だけを見るのではなく、その動作に関係する複数の関節や筋肉を確認することが重要です。
筋膜性疼痛症候群(MPS)と関節機能異常は相互に影響します
関節機能異常と、筋膜性疼痛症候群(MPS)は、別々に存在するだけではありません。
例えば、関節が動きにくくなると、周囲の筋肉がその動きを補おうとして過剰に働くことがあります。
その状態が続くと、特定の筋肉へ負担が集中し、MPSや関連痛が生じる可能性があります。
反対に、筋肉に痛みや強い緊張があると、身体は痛む場所を守ろうとして動きを小さくします。
その結果、関節の動きがさらに制限される場合もあります。
流れを整理すると、
- 関節が動きにくくなる
- 周囲の筋肉が代わりに働く
- 筋肉へ負担が集中する
- MPSや関連痛が起こる
- 痛みによって関節がさらに動きにくくなる
という悪循環が生じることがあります。
ただし、常に関節が先とは限りません。
筋肉の緊張や痛みが先に生じ、後から関節の動きが変化することもあります。
さらに慢性痛では、局所の筋肉や関節だけでなく、脳や脊髄を含む痛みの調節機能、睡眠、疲労、ストレス、痛みに対する不安なども症状へ影響します。
したがって、筋肉だけ、関節だけと切り離さず、身体全体の動きや生活背景まで含めて考える必要があります。
触っただけで関節機能異常を断定できるわけではありません
関節の状態を手で確認することは、評価の一つとして役立ちます。
しかし、一か所を触っただけで、関節機能異常の有無や痛みの原因をすべて断定できるわけではありません。
確認する必要があるのは、
- いつから痛むのか
- どの動作で痛むのか
- どの方向へ動かしにくいのか
- 可動域や左右差があるか
- 筋肉の緊張や圧痛があるか
- 関節へ負荷を加えたときに症状が再現されるか
- 動きや施術によって症状が変化するか
- 外傷や病気を疑う症状がないか
といった複数の情報です。
特に仙腸関節などでは、一つの検査だけよりも、複数の誘発検査を組み合わせたほうが判断に役立つことが報告されています。
一つの所見だけを根拠にせず、病歴、動作、徒手検査、必要に応じた画像検査などを総合して判断することが重要です。
病院での確認を優先したい症状
関節の動きに問題があるように感じても、次のような場合は先に病院へ相談してください。
- 転倒や事故の後から強く痛む
- 関節が大きく腫れている
- 赤みや熱感、発熱がある
- 安静にしていても激しく痛む
- 夜間痛が強く、姿勢を変えても軽くならない
- 手足に強いしびれや筋力低下がある
- 排尿や排便の異常を伴う
- 原因不明の体重減少がある
- 痛みが急速に悪化している
関節機能異常を考える前に、骨折、感染症、神経障害など、病院での検査や処置が必要な状態を除外することが大切です。
おおしま接骨院で確認すること
当院では、痛む場所だけを見て施術内容を決めるのではなく、
- 痛みが生じる姿勢や動作
- 関節ごとの可動性
- 左右の動き方の違い
- 立位や歩行時の荷重
- 周囲の筋肉の緊張や圧痛
- MPSによる関連痛
- 日常生活で繰り返している動作
- 睡眠や疲労の状態
- 痛みに対する不安や警戒
などを確認します。
関節機能異常が疑われる場合も、「骨がずれているから元の位置へ戻す」と単純に考えるわけではありません。
状態に応じて、穏やかに関節を動かす施術、周囲の筋肉に対する施術、セルフケアなどを組み合わせます。
関節が壊れていなくても、動きの問題で痛むことがあります
レントゲンやMRIで明らかな異常が見つからなくても、痛みや動かしにくさが起こることはあります。
その場合は、骨や関節の構造だけでなく、
- 関節がどのように動いているか
- 周囲の筋肉と協調できているか
- 別の場所が動きを代償していないか
- MPSや関連痛が生じていないか
- 痛みに対する警戒が動きを制限していないか
といった機能面も確認する必要があります。
関節機能異常は、画像検査を否定する考え方ではありません。
画像検査で身体の構造を確認し、動作や徒手検査によって身体の働きを確認する。
それぞれの情報を組み合わせることで、痛みをより多面的に考えることができます。
「画像では異常がないのに痛い」という方は、痛む場所だけでなく、その周囲の関節や筋肉、身体全体の動きも一度確認してみましょう。
いつでもご相談ください。







