「最近、痛みが強い」は天気のせい?―日照不足と慢性痛の意外な関係
要点
  • 天候と慢性痛には関連がみられる研究がありますが、気圧・気温・湿度の影響は一貫していません
  • 日照時間が長い地域ほど慢性広範痛が少なかったという日本の研究があります
  • 日照不足は、ビタミンD・睡眠・体内時計・身体活動・気分などを介して痛みに影響する可能性があります
  • ただし、「日照不足が慢性痛の原因」とまでは証明されていません
  • 「天気が悪くて痛みが増えた=身体の組織がさらに傷んだ」ではありません
  • 天気は変えられなくても、睡眠・生活リズム・活動量など、調整できる部分はあります

最近、関東では曇りや雨の日が続いています。
洗濯物が乾かないので、困ったものです。

こうした天気が続くと、

「雨の日は腰が痛い」
「天気が悪いと古傷がうずく」
「曇っている日は身体が重い」
「低気圧が近づくと調子が悪い」

という話を聞くことがあります。

では、本当に天候によって痛みは変わるのでしょうか。

実は、気温・気圧・湿度と慢性痛については以前から多くの研究が行われています。

しかし最近は、それだけではなく、「日照時間」も慢性痛と関係している可能性が注目されています。

今回は、天候と慢性痛について、現在分かっていることを研究から考えてみます。

天気が悪いと本当に痛みは強くなるのか?

「雨が降ると関節が痛む」
「低気圧になると腰痛が悪化する」

こうした経験を持つ方は少なくありません。

実際、気温、気圧、湿度、降水量などと慢性筋骨格痛との関係を調べた研究は数多くあります。

2020年に医学誌『Pain』に掲載されたレビューでは、気象条件と慢性筋骨格痛を調べた43研究が検討されました。

そのうち約67%では、何らかの気象要因と痛みとの関連が報告されています。

一方で、

  • 気温が関係した研究と関係しなかった研究
  • 気圧が関係した研究と関係しなかった研究
  • 湿度が関係した研究と関係しなかった研究

がそれぞれ存在し、結果はかなり不均一でした。

つまり現在の研究からは、

「低気圧になれば誰でも痛くなる」
「湿度が高いから関節が痛む」

といった単純な説明はできません。

最近注目したいのは「日照時間」

ここで興味深いのが、気圧や湿度だけではなく日照時間です。

2025年、日本の都市部に住む65歳以上の高齢者10,663人を対象として、居住地域の気候条件と慢性痛との関係を調べた研究が発表されました。

この研究では、

  • 日照時間
  • 気温
  • 湿度
  • 降水量
  • 周囲の緑地

などが調査されています。

その結果、3か月以上続く「慢性痛全般」については、日照時間との明確な関連は認められませんでした。

ところが、身体の複数の部位に痛みが広がる慢性広範痛については違いました。

日照時間が短い地域と比較すると、日照時間が長い地域ほど慢性広範痛が少ない傾向が認められたのです。

最も日照時間の長い群では、最も短い群と比較して慢性広範痛の有病率が約21%低いという結果でした。

もちろん、この研究だけで、

「日光を浴びれば慢性痛が改善する」

と結論づけることはできません。

この研究は横断研究なので、日照時間と慢性広範痛との「関連」を示した研究だからです。

それでも、日本人1万人以上を対象とした研究で日照時間と慢性広範痛との関係が確認されたことは興味深い結果です。

英国でも「日照時間が長い日は痛みが少ない」という研究がある

日照と痛みの関係は、日本だけで報告されているわけではありません。

英国北西部で行われたEpiFunD研究では、2,491人について、その日の気象条件と痛みとの関係が調べられました。

調査されたのは、

  • 日照時間
  • 降水量
  • 気温
  • 気圧

などです。

さらに、

  • 睡眠
  • 運動
  • 気分

といった要素についても調べています。

この研究でも、日照時間と痛みとの関連が認められています。

つまり、

「日照時間が少ない時期には痛みを感じやすくなる人がいる可能性」

は以前から示唆されているのです。

なぜ日照時間が痛みと関係するのか?

では、なぜ日照時間が少ないと痛みに影響する可能性があるのでしょうか。

重要なのは、ここを

「太陽の光が直接痛みを消している」

と単純に考えないことです。

日照時間が変化すると、私たちの身体や生活にはさまざまな変化が起こります。

考えられる経路はいくつもあります。

日照不足とビタミンD

代表的なのがビタミンDです。

ビタミンDは食事から摂取するだけではなく、紫外線B波(UV-B)を受けることで皮膚でも作られます。

そのため、日照が少なくなればビタミンDの産生量が低下する可能性があります。

ビタミンDは、

  • 骨代謝
  • 筋肉の機能
  • 免疫機能
  • 炎症調節

など多くの生理機能に関係しています。

実際、ビタミンD濃度と慢性痛について調べた系統的レビュー・メタ解析では、ビタミンD濃度が低い人ほど、慢性広範痛や筋骨格痛を持つ傾向が報告されています。

ここから、

日照不足

ビタミンD低下

筋骨格系・免疫系・神経系などへの影響

痛みに影響する可能性

という経路が考えられています。

しかし、注意点があります。

「ビタミンDが低い=ビタミンDを飲めば痛みが治る」ではありません

これは非常に重要です。

観察研究で、

「慢性痛の人ではビタミンDが低いことが多い」

という結果が出たとしても、

「ビタミンDを補充すれば慢性痛が治る」

とは限りません。

2024年に発表された慢性腰痛に対するビタミンD補充のメタ解析では、10件のランダム化比較試験が検討されました。

その結果、ビタミンDを補充しても、慢性腰痛を明確に軽減する効果は確認されませんでした。

また、逆の因果関係も考える必要があります。

痛みが強い

外出しなくなる

身体活動が減る

日光を浴びる時間が減る

ビタミンDが低くなる

という可能性です。

つまり、

「ビタミンD不足が痛みを作った」のか、
「痛みがあるためビタミンDが低くなった」のか

を単純に区別することはできません。

日照時間は「体内時計」にも関係する

もう一つ重要なのが、概日リズム、いわゆる体内時計です。

私たちの身体は約24時間周期で、

  • 睡眠と覚醒
  • ホルモン分泌
  • 体温
  • 自律神経活動
  • 免疫機能

などを調節しています。

その体内時計を毎日調整する非常に重要な刺激が「光」です。

朝に光を浴びることで体内時計が調整され、夜になると眠くなるというリズムが作られています。

ところが、曇りや雨の日が長期間続き、さらに外出する機会まで減ると、普段より強い光を浴びる時間が減ることがあります。

すると、

日照不足

概日リズムの変化

睡眠の質や自律神経、ホルモン分泌などへの影響

痛みの感じ方が変わる

という経路も考えられます。

慢性痛は単に筋肉や関節だけで決まるものではありません。

睡眠不足や疲労、不安、ストレスなどによって痛みが強く感じられることは、現在ではよく知られています。

雨の日は身体活動も減りやすい

もう一つ忘れてはいけないのが身体活動量です。

晴れていれば、

「散歩に行こう」
「買い物に行こう」
「少し庭仕事をしよう」

と思う人でも、雨が続けば外出する機会は減ります。

結果として、

雨や曇りが続く

外出が減る

身体活動が減る

睡眠や気分にも影響する

身体のこわばりや痛みを感じやすくなる

ということも考えられます。

つまり、日照時間そのものだけではなく、天候によって生活そのものが変化している可能性があります。

皮膚も「光」を感じている

さらに興味深い研究分野があります。

私たちは普通、「光を感じるのは目」と考えます。

しかし実際には、人間の皮膚にもオプシンと呼ばれる光を感知するタンパク質が存在することが分かっています。

皮膚の細胞は単なる身体の包装材ではありません。

外界のさまざまな刺激を感知し、免疫やホルモン、神経系などと情報をやり取りする大きな感覚器官でもあります。

そのため、光が皮膚を通じて身体に何らかの生理的影響を与えている可能性について研究が進んでいます。

ただし、

「皮膚への日照不足が慢性痛を起こす」

というところまで証明されているわけではありません。

現時点では、とても興味深い研究分野ではありますが、慢性痛との直接的な関係については今後の研究が必要です。

慢性広範痛で関係が見られたことは興味深い

今回紹介した日本の研究で特に興味深いのは、

一般的な慢性痛では日照との関連が明確ではなかったのに、慢性広範痛では関連が認められた

という点です。

慢性広範痛では、身体の一部分だけではなく、広い範囲に痛みが現れます。

こうした痛みでは、

  • 痛みを調節する神経系
  • 睡眠
  • ストレス
  • 気分
  • 身体活動
  • 自律神経
  • 生活環境

など、さまざまな要素が関係すると考えられています。

そのため、

日照時間

睡眠・体内時計

身体活動・気分

自律神経や神経系

痛み

という複数の経路が関係している可能性があります。

これは、

「雨だから関節が痛くなる」

という単純な説明よりも、慢性痛の実態に近いのかもしれません。

「天気が悪いから痛い」は間違いではありません

ここまで読むと、

「じゃあ、天気と痛みは関係ないの?」

と思うかもしれません。

そういうわけでもありません。

研究でも、気象条件と痛みとの関連を認めたものは多数存在します。

ですから、

「雨の日には痛みやすい」
「季節の変わり目は調子が悪い」

という本人の経験を否定する必要はありません。

ただし大切なのは、

天気が悪くなって痛みが増えた

関節や筋肉、神経などの組織がさらに傷んだ

とは限らないということです。

痛みは、身体の状態だけではなく、

  • 睡眠
  • 疲労
  • ストレス
  • 気分
  • 身体活動
  • 周囲の環境
  • 過去の経験

など、多くの情報を脳が統合した結果として変化します。

天候も、その中の一つの要素なのかもしれません。

天気そのものは変えられなくても、できることはある

残念ながら、私たちに天気を変えることはできません。

しかし、天候によって影響を受けやすい生活要因については調整できます。

雨や曇りの日が続くときほど、

  • 朝起きたらカーテンを開ける
  • 可能であれば日中に外へ出る
  • 睡眠時間を大きく乱さない
  • 家の中でも身体を動かす
  • 痛みを怖がって活動を極端に減らしすぎない
  • 食事や生活リズムを整える

といったことは大切です。

特に慢性痛では、

「今日は雨だから悪くなる」
「低気圧だから今日は動いてはいけない」

と考え、必要以上に活動を制限すると、かえって身体活動量が低下することがあります。

もちろん、痛みが強い日に無理をする必要はありません。

その日の体調に合わせながら、できる範囲の活動を維持することが大切です。

おおしま接骨院では、痛みを一つの原因だけで考えません

慢性的な痛みでは、

「骨盤がずれているから」
「筋肉が硬いから」
「神経が圧迫されているから」
「低気圧だから」

と、一つの原因だけで説明したくなることがあります。

しかし実際の慢性痛は、もっと複雑です。

身体の状態だけでなく、睡眠、疲労、生活習慣、心理的ストレス、身体活動、環境など、さまざまな要素が痛みに影響します。

おおしま接骨院では、病名や一つの要因だけで痛みを決めつけるのではなく、筋肉や関節の機能、身体の使い方、生活状況などを確認しながら、その方の痛みに関係していそうな要素を一緒に整理していきます。

「雨の日になると痛みが強くなる」
「最近ずっと身体が重い」
「天候が悪いと調子が落ちる」

という方も、その痛みを単純に「天気のせい」で終わらせず、少し広い視点から身体と生活を見直してみると、対処できることが見つかるかもしれません。

慢性痛は、筋肉や関節だけでなく、睡眠、ストレス、身体活動、生活環境など、さまざまな要素から影響を受けます。

「画像では異常があると言われたけれど、本当にそれだけが痛みの原因なのか」
「坐骨神経痛や脊柱管狭窄症と言われて不安」
「痛みが長引いていて、どう考えればいいのか分からない」

という方は、以下の記事も参考にしてください。

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