
痛みとは
痛みは、国際疼痛学会によって
「不快な感覚性・情動性の体験」
と定義されています。
つまり痛みとは、単なる“傷のサイン”ではなく、個人が体験する現象なのです。
なぜ従来の説明では足りないのか
これまで痛みは、
- 骨の変形
- 神経の圧迫
- 椎間板ヘルニア
- 脊柱管狭窄症
といった「構造の異常」で説明されてきました。いわゆる損傷モデルです。
しかし研究が進むにつれ、これらの所見は症状のない健常者にも多く見られることがわかってきました。変形性関節症も同様です。
さらに、運動療法や徒手療法によって症状が改善するケースが多いことからも、「壊れているから痛い」という説明だけでは十分でないことが明らかになっています。
生物心理社会的疼痛モデルという視点
そこで提唱されたのが、生物心理社会的疼痛モデルです。
これは痛みの原因を局所だけに求めるのではなく、
- 身体の状態
- 心理状態
- 社会的背景
を含めて総合的に捉える考え方です。
日本でも腰痛診療ガイドラインが整備され、
レッドフラッグ(危険信号)がなければ多くの場合画像検査は必須ではないこと、そしてストレスが腰痛に関与することが示されています。
現在はまさに、「損傷モデル」から「生物心理社会的疼痛モデル」へと移行している過渡期なのです。
急性痛と慢性痛は別物
急性痛は、組織損傷に伴う正常な警告反応です。多くは時間とともに回復します。
問題となるのは、痛みの入力が長期間続くことで神経系の回路が過敏化してしまった慢性痛です。
この場合、単一の治療だけでは不十分なことがあります。
- 薬物療法
- 運動療法
- 徒手療法
- 認知行動療法
- 読書療法
などを組み合わせ、神経系の過敏状態を落ち着かせていく必要があります。
思考が治療効果を左右する
例えば、同じヘルニアの診断を受けても、
「壊れているから治らない」と思いながら治療を受ける場合と、
「侵害受容器が興奮している状態だ」と理解して前向きに取り組む場合では、
治療効果に差が生じます。
実験でも、ポジティブな思考とネガティブな思考では治療経過に違いが出ることが示されています。
脳の解釈は、痛みの体験に直接影響するのです。
まずは知識のアップデートから
長引く痛みを早く改善するために、まずできること。
それは、
痛みの理解をアップデートすることです。
「壊れているから痛い」という損傷モデルから、
「身体・心・社会背景が影響する」という生物心理社会的疼痛モデルへ。
この視点の転換だけで、痛みが軽減する方もいます。
特別な治療を受けなくても、
まずは知ることから始められる。
読書で回復のきっかけが得られるなら、
これほど合理的な方法はありません。
長引く痛みは、必ずしも「治らない痛み」ではありません。
理解が変われば、行動が変わり、
行動が変われば神経系も変わります。
あなたの痛みも、まだ変わる可能性があります。



