
腰痛は非常に身近な症状ですが、その経済的負担は想像以上に大きいものです。
腰痛にかかる医療費の現状
順天堂大学の伊藤弘明氏らの報告によれば、日本における職業性腰痛の直接医療費は、2011年度で821億円にのぼるとされています。https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23955653/
これはあくまで「直接医療費」です。
休業補償や生産性低下などの間接費用を含めれば、社会全体への影響はさらに大きくなります。
腰痛は命に関わる疾患ではないことが多いにもかかわらず、医療費は高額です。
なぜなのでしょうか。
オーストラリアで行われた腰痛キャンペーン
かつてオーストラリア・ビクトリア州では、
「Back Pain: Don’t Take It Lying Down(腰痛に屈するな)」
という大規模な啓発キャンペーンが行われました。
メッセージは明確でした。
- 腰痛の多くは重篤な疾患ではない
- 痛みがあっても可能な範囲で日常生活を続けてよい
- 過度に恐れない
テレビ、新聞、小冊子などを通じて広く発信されました。
その結果、近隣のニューサウスウェールズ州と比較して、
・医療費は約20%減少
・労災申請件数は約15%減少
という変化が報告されています。
なぜ医療費は減少したのか
注目すべき点は、治療技術が劇的に進歩したわけではないということです。
変わったのは、「腰痛に対する社会の認識」でした。
痛みは単なる組織損傷だけで説明できるものではありません。
不安や恐怖、周囲からの言葉、メディアの影響なども痛みの体験に関与します。
過度な不安は、痛みを強めたり、長引かせたりすることがあります。
日本でできること
もし日本でも、腰痛に対する正しい理解が社会全体に広まればどうなるでしょうか。
不必要な安静や過剰な恐怖が減れば、
医療費の削減だけでなく、回復も早まる可能性があります。
腰痛は身体だけの問題ではありません。
それは認知と社会の問題でもあります。
余計な不安は痛みを強くします。
そして、正しい理解は回復力を支えます。



