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脊柱管が狭窄していても痛くない方はたくさんいる
(脊柱管狭窄症)
「脊柱管狭窄症ですね」と診断され、不安を抱えて来院される方は少なくありません。
脊柱管とは、脊髄神経を通す“管”のこと。
それが狭くなり、神経を圧迫することで症状が出ると説明されます。
しかし――
狭窄があっても無症状の方はたくさんいます。
逆に、狭窄が明らかでなくても下肢痛や間欠性跛行を訴える方もいます。
画像所見と症状は一致しない
腰痛や下肢痛の既往がない健康な67名にMRIを撮影した研究では、
- 椎間板ヘルニア
- 変形性脊椎症
- 脊柱管狭窄
- 椎間板変性
といった変化が、ごく一般的に見られたと報告されています。
つまり、画像異常=症状とは限らない、ということです。
手術しても改善しないケース
脊柱管狭窄症に対する除圧手術後の長期追跡調査では、
- 約1/4が再手術
- 約1/3が重度の腰痛を訴える
- 半数以上が長距離歩行困難
という報告もあります(Spine 1996;21(1):92-97)。
もちろん手術で改善する方もいますが、
“狭窄を広げれば必ず治る”とは言い切れません。
保存療法で改善する方もいる
一方で、
- 保存療法
- 運動療法
- ストレッチ
などで症状が改善する方も多くいます。
この差はどこで生まれるのでしょうか。
神経は圧迫されると必ず痛むのか?
生理学の知見では、
正常な神経は、単純な圧迫や牽引では痛みを発生しない
とされています。
脊柱管狭窄症には、
- 神経根型(主に痛み)
- 馬尾型(排尿排便障害・麻痺)
- 混合型
があります。
痛みがあるということは、
神経が活動電位を発生させ、中枢へ電気信号を伝えている状態。
一方、麻痺は電気信号のやり取りが困難、あるいは遮断された状態です。
同じ“狭窄”という構造変化で、
なぜ真逆の症状が生じるのでしょうか。
構造だけでは説明できない
臨床では、
関節やトリガーポイントを刺激することで
下肢痛が再現されるケースを多く経験します。
つまり、
- 神経の感受性
- 周囲組織の受容器
- 筋緊張や循環
- 神経系の可塑性
といった要素が関与している可能性があります。
狭窄は「存在」、痛みは「現象」
狭窄は画像上の“存在”。
痛みは神経系が作り出す“現象”。
両者は必ずしも一致しません。
だからこそ、
- 構造異常を評価する
- 同時に、痛みそのものを評価する
この両視点が必要です。
脊柱管狭窄症という診断に振り回されず、
痛みの本質を見極めることが大切だと考えています。



