腰椎椎間板ヘルニア

50代女性、2年前より症状が出たり引っ込んだりしていたそうです。3週間前から増悪、両足にしびれがでてきました。整形外科ではMRIで腰椎椎間板ヘルニアを指摘されています。

仙腸関節部に浮腫、可動域制限、下肢に数カ所のトリガーポイントを認めました。神経脱落症状はありません。この方はとても反応が良く、その場で改善しました。このまま問題なければ数週間で治ると思いますが、何があるかわかりませんからね、経過観察です。

2年前より神経の可塑化もなく、急性痛の状態を保っていたのでしょうか。慢性痛症と併せて急性痛が存在したのでしょうか。経過をみる必要がありますね。

椎間板ヘルニアは全く症状の無い方にも存在するんです。論文によっては健常人の75%からヘルニアが検出されたというのもあります。

熊澤孝朗先生の著書「痛みを知る」で正常な神経管は圧迫されても痛みは発生しないとあります。

また、横田敏勝先生の著書「臨床医のための痛みのメカニズム」では

◯神経痛一般の発生機序

痛覚繊維の生理的興奮は、その末梢の自由終末にある痛覚受容器(侵害受容器)が刺激されたときにみられる。

自由終末と脊髄を継ぐ部分からインパルスが発生することはめったにない。

痛覚受容器を介さずに神経線維からインパルスが発生することを異所性興奮という。異所性興奮を生じる可能性が高いのは、脱髄部および傷害された末梢神経の側芽と神経腫である。

◯神経根痛

脊髄後根を圧迫すると神経根痛(radicular pain) がでて、圧迫された後根の支配領域に痛みが走るとみられている。しかし、この考えは特別な場合にしか通用しない。たとえば、脱髄繊維を含む脊髄後根への機械刺激は神経根痛を誘発するが、正常な脊髄神経根の圧迫は痛みを生じない。

a.実験動物の正常な脊髄後根を圧迫しても、痛みを伝える侵害受容繊維を含めた求心性繊維の持続的発射活動は誘発されない。しかし、あらかじめ傷害しておいた脊髄後根を機械刺激すると、持続的なスパイク発射が誘発される。(Howe, Loser and Calvin,1977)

バルーンカテーテルを使って正常人の脊髄神経根を圧迫すると、錯感覚(paresthesia)と感覚鈍麻が誘発されるが痛みはでない。正常な脊髄後根を牽引しても痛くない。しかし、傷害歴のある脊髄神経根を鑷子(じょうし)で圧迫したり、縫合糸をかけて牽引したりすると、特徴的な神経根痛が走る。Kuslichら(1991)は、局所麻酔下に椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症の減圧手術を受けた患者193例を対象にして、局所麻酔薬を次第に追加しながらいろいろな組織を刺激したときに誘発される感覚を調べた。正常な脊髄神経根に触れても痛みはなかった。

とあります。

ヘルニアがあっても症状が無い方。ヘルニアが無くても症状がある方。

保存療法や運動で治る方。

手術してみたらヘルニアが無かったが、痛みがとれる方々。

この差はどこで生じてしまうのでしょうね。

生理学で有名なPatric Wallは著書、疼痛学序説(Pain the science of suffering)でヘルニア神話は終わったと言っています。

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