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―「手術=痛みが消える」とは限らないケース―
60代女性の症例です。
5年ほど前から右下肢の痛みとしびれが続き、複数の医療機関で脊柱管狭窄症と診断されていました。
保存療法で経過をみていましたが、次第に症状が強くなり、
最終的に手術を受けることになりました。
しかし、術後も痛みが十分に改善せず、当院を受診されました。
来院時の状態
来院時には、
- 右仙腸関節周囲の腫れ
- 関節の動きの低下
がみられました。
また、右下肢は健側と比べてやや細くなっている状態でしたが、
明らかな神経脱落症状(麻痺や感覚消失など)は認められませんでした。
筋肉が細くなると「神経がやられているのでは」と心配されがちですが、
実際には
- 関節の機能低下
- 軟部組織の反射異常
- 痛みを避ける動きの癖
といった要因でも、
筋力低下や筋萎縮が起こることは珍しくありません。
神経由来の萎縮か、
関節や筋膜の問題によるものかは、
評価を行えば臨床的に判断がつくことが多いです。
施術後の経過
施術開始当初は、
大きな変化は感じにくい状態が続きました。
しかし、5回目の施術を過ぎた頃から徐々に症状が軽減し、
現在は腰に多少の違和感が残るものの、
日常生活には支障がないレベルまで回復されています。
なぜ手術をしても痛みが残るのか
脊柱管狭窄症では、次のようなケースが実際によく見られます。
- 手術をしても、痛みやしびれが残る方
- 手術をしなくても、症状が落ち着く方
- 痛みがなくても、画像上は狭窄がみられる方
同じ「脊柱管狭窄症」という診断名でも、
経過は人によって大きく異なります。
従来の考え方と、現在の視点
これまで痛みやしびれは、
- 関節の変形
- 摩耗
- 神経への圧迫
によって生じると考えられてきました。
いわゆる 「損傷モデル」 です。
しかし近年では、
神経は単純に圧迫されただけでは
必ずしも痛みやしびれを起こさない
ことが分かってきています。
実際には、
- 関節や筋肉の動き
- 周囲組織の緊張
- 神経の反応の過敏さ
- 痛みが続いたことによる影響
などが複雑に関係し、
痛みとして表れているケースが少なくありません。
手術後でも「評価する視点」は残っている
手術を受けたあとでも、
- 本当に問題になっている部位はどこか
- 神経以外の要素が関与していないか
- 体が過剰に防御していないか
こうした視点で体を見直すことで、
回復の糸口が見つかることがあります。
まとめ
- 脊柱管狭窄症の診断名と症状の強さは一致しないことがある
- 手術をしても痛みが残るケースは珍しくない
- 痛みの原因は「圧迫」だけでは説明できないことが多い
- 手術後でも、体を評価する価値は十分にある
「もう手術もしたし、仕方がない」
そう思っている方にこそ、
別の見方が必要な場合があります。



