産後の骨盤は本当に「歪む」のでしょうか

― 知っておいてほしい、大切な視点 ―

「産後は骨盤が歪む」
「歪んだ骨盤を整えないと腰痛が治らない」

こうした説明を、一度は耳にしたことがある方も多いと思います。

ですが、ここで一度立ち止まって考えてみてください。


そもそも骨盤は、そんなに大きく動くのでしょうか

骨盤の要となる仙腸関節は、
解剖学的に見ても動きの非常に小さい関節です。

研究や解剖学的知見では、
その可動域は 約1〜3mm程度 とされています。

つまり、

  • グラグラ動く関節ではない
  • 目で見て分かるほど「歪む」構造ではない

というのが現実です。


「歪み」は、基準がなければ判断できません

ここで、もう一つ重要な視点があります。

仮に「歪んでいる」と言うのであれば、
「歪んでいない状態」が分かっていなければなりません

しかし実際には、

  • 出産前の骨盤の状態を正確に知っている
  • 個人ごとの正常位置を把握している

こうした条件を満たすことは、ほぼ不可能です。

つまり、

👉 「歪んでいる」と断定する客観的な基準そのものが存在しない

という問題があります。


骨盤と腰痛は、単純な因果関係ではありません

研究では、

  • 骨盤の位置や形と腰痛の有無に、明確な関連は見られない
  • 妊娠・出産の有無で、椎間板の状態に大きな差はない

といった報告もあります。

これは、

👉 腰痛の原因を「骨盤の歪み」だけで説明するのは無理がある
ということを示しています。


なぜ「骨盤の歪み」という説明が広まったのか

「歪み」という言葉は、

  • 分かりやすい
  • イメージしやすい
  • 不安を刺激しやすい

という特徴があります。

そのため、
整体や施術の世界では非常に使いやすい言葉でもあります。

しかし、

👉 分かりやすさ
= 正しさ

とは限りません。


産後腰痛で本当に大切なこと

産後の腰痛は、

  • 出産という大きな身体的ストレス
  • 痛みの経験
  • 睡眠不足や疲労
  • 栄養不足
  • 心身の回復途中という状態

こうした複数の要因が重なって起こることがほとんどです。

必要なのは、

  • 歪みを探すこと
    ではなく
  • 今の体がどんな状態にあるのかを丁寧に評価すること

です。


まとめ

― 「歪み」に振り回されないでください ―

  • 骨盤は大きく歪む構造ではありません
  • 「歪み」を判断する明確な基準は存在しません
  • 産後腰痛は、骨盤の形だけで説明できません
  • 不安を煽る説明より、体の状態を正しく見ることが大切です

産後の腰痛で悩んでいる方に、
余計な不安を背負ってほしくありません。

「歪んでいるから治らない」のではなく、
回復の途中にある体が、助けを求めている
そう考えていただければ十分です。

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