
※本記事は、実際の症例をもとに構成した一例です。
症状や経過、回復の程度には個人差があり、すべての方に同様の結果を保証するものではありません。
痛みや不調が続く場合は、状態に応じた適切な評価と対応が必要となります。
※捻挫をしてから何か月も痛みや違和感が続いている方へ。
「そのうち治る」と様子を見ていた足首の痛みが、なかなか改善しない場合、通常の捻挫とは異なる経過をたどっている可能性があります。
本記事では、実際の症例をもとに、捻挫後に痛みが長引くケースについて解説します。
30代女性。
半年前、段差に足を取られて右足関節を捻挫しました。
「大したことはないだろう」と自己判断し、特に治療は行わずに経過を見ていたそうです。しかし、時間が経っても痛みが引かず、違和感も続くため来院されました。
目次
初見時の状態
初見時、右足関節外側に以下の所見がみられました。
- 外果周囲のびまん性の浮腫
- 皮膚色調の変化
- 発汗過多
- 圧痛および運動時痛
これらの所見から、CRPS(複合性局所疼痛症候群)TypeⅠが疑われました。
CRPS TypeⅠとは
CRPS TypeⅠは、比較的軽微な外傷や捻挫などをきっかけに発症することがある疾患で、
原因となった怪我の程度とは釣り合わない強い症状が長期間続くのが特徴です。
代表的な症状には、
- 強い痛み
- 浮腫
- 皮膚血流の変化
- 皮膚の変色
- アロディニア(軽い刺激でも痛みを感じる)
- 多毛や爪の変化
- 発汗異常
などが挙げられます。
これまでの考え方と現在
かつては、外傷後に交感神経が異常に興奮することで痛みの悪循環が生じると説明されてきました。
しかし現在では、交感神経ブロックを行っても症状が改善しない、あるいはかえって悪化する例もあることが知られています。
つまり、CRPSは単純に「交感神経の問題」だけでは説明できない、より複雑な状態だと考えられています。
施術経過
この方の場合、施術後に
- 皮膚の変色が改善
- 接地時の痛みが軽減
といった変化が見られました。
3回目の施術後には、日常生活にほとんど支障がない状態まで改善。
現在は「たまに軽い痛みを感じる程度」とのことです。
改善について
CRPSは症状の程度にもよりますが、完全に元通りになることは少ないとされています。
一方で、日常生活に支障が出ないレベルまで回復するケースは多く、適切な対応が非常に重要です。
まとめ
この症例からも分かるように、
早期発見・早期対処が回復の鍵
となります。
「捻挫だからそのうち治るだろう」
「検査で異常がないから大丈夫」
そう思っているうちに、痛みが慢性化してしまうこともあります。
違和感や痛みが長引く場合は、早めに専門家へ相談することをおすすめします。
本記事は、捻挫後に疼痛が遷延した症例について、臨床所見と経過を整理した症例報告です。
CRPS TypeⅠを疑った判断過程および治療後の変化について、治療家・医療従事者向けに考察を加えています。
捻挫後に遷延する足関節痛 ― CRPS TypeⅠが疑われた一例 ―
症例
30代女性。
約6か月前、段差に足を取られ右足関節を捻挫。受傷当初は軽症と自己判断し医療機関を受診せず経過観察していた。しかし、疼痛が遷延し改善が見られないため当院に来院。
初診時所見
右足関節外側部を中心に以下の所見を認めた。
- 外果周囲のびまん性浮腫
- 皮膚色調の変化
- 発汗過多
- 圧痛
- 運動時痛および荷重時痛
外傷の程度と比較して症状が不釣り合いであり、CRPS(Complex Regional Pain Syndrome)TypeⅠを疑った。
考察:CRPS TypeⅠについて
CRPS TypeⅠは、明確な神経損傷を伴わない軽微な外傷(捻挫、打撲、手術後など)を契機として発症することがある疼痛症候群である。
臨床的には以下の症状が混在して出現する。
- 持続的かつ強い疼痛
- 浮腫
- 皮膚血流異常・皮膚温変化
- 皮膚色調変化
- アロディニア
- 多毛、爪の変形
- 発汗異常
従来は、外傷後に生じた交感神経系の異常興奮が疼痛の悪循環を形成すると説明されてきた。しかし現在では、交感神経ブロックによって必ずしも症状が改善せず、逆に増悪する症例が存在することも報告されている。
このことから、CRPSは交感神経単独の問題ではなく、
- 中枢性感作
- 末梢神経・免疫系・血管運動調節の関与
- 身体図式・感覚運動統合の破綻
など、多因子的な病態として理解されつつある。
治療経過
本症例では、初期施術後より
- 皮膚色調の改善
- 荷重時痛の軽減
が認められた。
3回目の施術終了時点で、日常生活動作における支障はほぼ消失。
現在は「時折軽度の疼痛を自覚する程度」とのことで、機能的には良好な経過を辿っている。
予後について
CRPSは病期や重症度によって予後が大きく異なり、完全に発症前の状態へ回復することは必ずしも多くない。
一方で、適切な評価と介入が行われた場合、日常生活に支障が出ないレベルまで改善する症例は少なくない。
まとめ
本症例からも、
- 外傷の程度と症状の乖離
- 浮腫・皮膚症状・発汗異常などの自律神経系所見
を見逃さず、早期にCRPSを疑い介入することの重要性が示唆される。
捻挫や軽外傷後であっても、疼痛が遷延し、通常の回復過程から逸脱している場合には、
「単なる治りの悪い捻挫」として扱わず、CRPSを含めた病態評価が必要である。
※本症例は個別の臨床経過を示したものであり、治療効果を一般化するものではありません。
病態や介入内容は症例ごとに異なり、臨床判断には十分な評価が必要です。



