
ノーシーボ効果とは
ノーシーボ効果とは、マイナスの暗示によって症状が悪化したり、体調を崩してしまう現象のことです。
その逆がプラシーボ効果。こちらは、プラスの暗示によって症状が改善する現象を指します。
私たちの身体は、「何を信じているか」によって実際に変化してしまうことがあります。
プラシーボ効果の有名な例
ある医師が「これは新しく開発された薬です」と説明し、実際にはただの小麦粉を丸めたものを患者に渡しました。
すると、その患者の症状はみるみる改善し、回復してしまったのです。
薬効成分は入っていません。
それでも「効く」と信じたことで身体が反応した。
これがプラシーボ効果です。
実際、医療現場では
「病院に来ただけで少し楽になった」
という経験をされる方も少なくありません。
これも心理的・神経生理学的なプラシーボ反応の一種と考えられています。
ノーシーボ効果 ― 負の暗示の力
では逆に、「悪くなる」と信じたらどうなるのでしょうか。
第二次世界大戦前、ヨーロッパで行われたとされる有名な実験があります。
ある死刑囚に対し、
「体内の血液量の限界を調べる実験を行う」
と説明し、目隠しをしてベッドに寝かせました。
足先を小さく切開し、血液が滴り落ちる音を聞かせながら、
「現在、体重の〇%の血液が失われました」
と定期的に伝え続けました。
やがて「体重の10%を超えた」と告げられた時、その囚人は死亡したとされています。
しかし実際には、血液はほとんど抜かれていませんでした。
聞かされていたのは水滴の音だけ。
「血が失われている」という強い思い込みが、身体を本当に限界状態へと導いてしまったのです。
これがノーシーボ効果と呼ばれる現象です。
慢性痛とノーシーボ
慢性痛の現場では、このノーシーボ効果が大きく関与しているケースが少なくありません。
- 「この腰はもう一生治らない」
- 「年齢だから仕方ない」
- 「ヘルニアだから動いたら悪化する」
こうした言葉を繰り返し聞くことで、脳は「危険だ」と学習します。
すると実際に痛みが増幅されやすくなります。
痛みは単なる組織の問題ではなく、脳・神経・感情が関与する体験です。
否定的な予測は、神経系の過敏化を強めることが知られています。
つまり、「治らない」という思い込みそのものが、症状を固定化してしまうことがあるのです。
では、どうすればいいのか?
大切なのは、根拠のない楽観ではありません。
「回復する可能性はある」と知ることです。
- できる範囲で日常生活を維持する
- 過度に安静にしすぎない
- 気分転換や楽しみを持つ
- 適切な治療を受ける
そして治療者側は、
- 痛みの背景を丁寧に探る
- 不必要な恐怖を与えない
- 早期に痛みを軽減させる
この両輪が重要です。
人間の心は、身体を動かす
「治る」と信じることでプラシーボが働くように、
「治らない」と信じることでノーシーボが働きます。
思い込みは、単なる気持ちの問題ではありません。
神経系を通じて、身体に実際の変化を起こします。
慢性痛の改善において重要なのは、
痛みだけを見るのではなく、信念や予測も含めて整えていくこと。
ノーシーボの威力を知ることは、
それに振り回されないための第一歩です。



