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「手術したのに楽にならない…」その違和感は自然なことです
痛みやしびれを改善したくて手術を受けたのに、思ったほど楽にならない。
あるいは、体は回復しているはずなのに、気持ちがついていかない。
これはとてもつらい状況ですし、「なぜ?」と感じるのは当然のことです。
実際、名倉潤さんのケースでも、手術は成功していたにもかかわらず、その後のストレスがきっかけとなり、心身の不調につながったと報じられました。
少し意外かもしれませんが、こうした流れは臨床でも珍しいものではありません。
「ヘルニア=痛み」という大きな誤解
多くの方が「ヘルニアがあるから痛い」と考えています。
ですが、この前提は現在では見直されています。
実は、画像検査でヘルニアや変形が見つかっても、まったく症状のない方は少なくありません。
つまり、
構造の問題=痛みの原因とは限らないということです。
ここで一度、立ち止まってみてください。
「原因が見つかれば治る」という考えが、必ずしも当てはまらないこともあるのです。
痛みは「脳の反応」として起きている
慢性痛を理解するうえで重要なのは、「痛みは脳で作られる」という視点です。
急性痛は、ケガや炎症などの危険を知らせる役割があります。
一方で、3ヶ月以上続く慢性痛では、体の状態だけでなく、
・過去の経験
・不安や恐怖
・ストレス
・環境
こうした要素が複雑に関わってきます。
長く続く痛みの入力によって、脳の「痛みの処理システム」が変化し、必要以上に痛みを感じやすくなることがあります。
これは異常ではなく、あくまで学習の結果です。
現場でよくある一例
例えば、手術後に「もう大丈夫」と頭では分かっていても、
・また痛くなるのではないか
・動かすと悪化するのではないか
こうした不安が続くと、体は無意識に緊張しやすくなります。
その結果、
痛みが長引いたり、別の部位に広がることもあります。
これは「気のせい」ではありません。
脳が安全かどうかを慎重に判断している状態です。
日本の慢性痛医療が抱える課題
現在、海外では「生物心理社会モデル」という考え方が主流です。
これは、体・心・環境を一体として捉える視点です。
一方で、日本ではこの教育が十分とは言えず、
構造(骨・関節・神経)中心の考え方が今も強く残っています。
その結果、
「原因を取り除く=治る」というモデルに偏りやすく、
慢性痛への対応が難しくなっている側面があります。
「知ること」で痛みが変わることもある
臨床的にも、痛みについて正しく理解することで、症状が軽減するケースは少なくありません。
実際、Udermannら(2004)の研究では、
慢性腰痛患者に対する教育的介入により、短期間で症状の改善が見られたと示唆されています。
ただし、この研究はサンプル数や主観評価の影響もあり、すべての人に同様の効果があるとは限りません。
それでも重要なのは、
痛みの理解が安心につながる可能性があるという点です。
不安が和らぐことで、体の過剰な緊張が抜け、結果として痛みが軽減する。
こうした流れは、日常臨床でもよく見られます。
慢性痛は変化していく可能性があります
慢性痛は「治らないもの」と思われがちですが、そうとは限りません。
脳には可塑性(変わる力)があります。
つまり、痛みの感じ方も変化していく可能性があります。
時間はかかることもありますが、
適切な理解とアプローチによって、楽になる方向へ進むことは十分に考えられます。
大丈夫です。
これは特別なことではなく、よくある回復のプロセスです。
まずできる小さな一歩
無理に何かを大きく変える必要はありません。
まずは、
「痛み=壊れているサインとは限らない」
という視点を持つことから始めてみてもよいかもしれません。
書籍や動画などで、痛みについて学ぶことも一つの方法です。
読書が苦手な方は、短い解説動画でも十分です。
理解が少し深まるだけでも、体の反応は変わってくることがあります。
ここまで読み進めてくださった方は、すでに痛みに対する見方が少し変わっているかもしれません。
その感覚を大切にしながら、必要に応じて専門家と一緒に整理していくことも、回復への一つの流れです。
当院でも、そのお手伝いをしています。





