
脊柱管狭窄症
埼玉県内よりお越しのAさん。
1ヶ月半前から腰痛と両下肢のしびれが出現。
整形外科では「脊柱管狭窄症。手術の可能性あり」と説明を受け、不安な状態で来院されました。
症状が出る前には足底筋膜炎があり、痛みをかばいながら歩いていたとのこと。
身体は連動しています。
足の痛みが歩行パターンを変え、それが腰や下肢へ影響することは十分考えられます。
「麻痺」という言葉への不安
来院時、Aさんは何度も「麻痺」という言葉を口にされていました。
医学的に麻痺とは
- 知覚鈍麻
- 知覚脱失
- 運動麻痺
といった神経脱落症状を指します。
痛みやしびれは「麻痺」ではありません。
痛みとは、電気信号です。
どこかの痛覚センサーが興奮し続けている状態です。
初回の所見
- 歩行困難(痛みによる)
- 疼痛性側湾
- 腰椎伸展障害
- 足背屈力が軽度低下
ただし、
- 深部腱反射異常なし
- 病的反射なし
- 筋萎縮なし
明らかな進行性神経障害を示す所見はありませんでした。
足背屈力の低下も、
必ずしも神経障害だけで起こるとは限りません。
痛みによる抑制(防御反応)や、関節の固有受容器の異常でも起こります。
ここは経過観察が重要です。
経過
初回では大きな変化は感じにくい状態でした。
しかし本日2回目の来院時には、
歩行は明らかに改善。
「とても楽になりました」とのこと。
負荷をかければまだ痛みは出ますが、
順調に回復方向へ向かっています。
問題がなければ、あと1〜2回で終了できる見込みです。
画像と症状は一致するのか?
脊柱管狭窄症は、画像診断の進歩とともに診断数が増えました。
しかし、研究では
画像所見と臨床症状の間に明確な相関は認められなかった
という報告もあります。
実際、
- 症状がなくても狭窄がある方
- 症状があっても画像に明確な異常がない方
は少なくありません。
なぜ差が生まれるのか?
ここが重要です。
痛みは単なる構造の問題ではありません。
- 神経の感受性
- 動作パターン
- 筋・筋膜の状態
- 中枢神経の興奮度
これらが複雑に絡みます。
画像は「形」を示しますが、
痛みは「機能」の問題でもあります。
まとめ
脊柱管狭窄症と診断されても、
- すぐに手術が必要とは限りません
- 麻痺と痛みは別物です
- 画像=症状ではありません
大切なのは、
神経脱落症状があるかどうかを丁寧に評価し、
経過を冷静に見ること。
身体は、思っている以上に回復する力を持っています。
参考文献
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