
本日の患者さん。
さいたま市よりお越しのAさんは、運動中に背中を痛めてしまいました。
初回観察時は、
- 動作時痛
- 背中から腰にかけての筋硬結
が中心で、施術反応も良好でした。
ところが本日来院された際、
「元々の背中の痛みは大分良くなったが、その上と下が痛くなった。」
とのこと。
■ 痛みの“順位づけ”
これはおそらく
広汎性侵害抑制調節(DNIC:diffuse noxious inhibitory control)※読みはデニック
という現象です。
身体には、
「より強い痛みが入ると、他の痛みを抑える」
という仕組みがあります。
いわば、痛みに優先順位をつけるシステムです。
緊急性が高い刺激に集中するため、
それ以外の痛みは一時的に抑制されます。
■ 痛みで痛みが抑えられる
例えば、
- どこかを強くぶつけると、他の痛みを一瞬忘れる
- 鍼やマッサージで別の部位を刺激すると痛みが軽減する
こうした現象も、この仕組みに関連しています。
脳から脊髄へ下行する抑制系が働き、
痛み信号の伝達をブレーキします。
■ 痛みが移動したように感じる理由
最初の強い痛みが落ち着くと、
それまで抑えられていた部位の感覚が表に出てきます。
「痛みが広がった」
「場所が変わった」
と感じることがありますが、
実際には“抑制が解除された”だけのこともあります。
■ 身体は常に調整している
痛みは単なる異常ではなく、
神経系のダイナミックな調整の結果です。
このDNICの仕組みがうまく働いている人ほど、
痛みをコントロールしやすい傾向があります。
逆に慢性痛では、この抑制系の働きが弱くなることも知られています。
身体には、まだまだ興味深い仕組みがたくさんあります。
「痛みで痛みが抑えられる」
一見不思議ですが、
実はとても合理的な生体防御反応なのです。



