
マックス・プランク進化人類学研究所を中心とした国際研究チームは、タンザニアの狩猟採集民ハザ族の腸内細菌叢を調査しました。
この研究は、近代的な食生活の影響をほとんど受けていない人々の腸内環境を分析した、貴重な報告のひとつです。
ハザ族の腸内細菌は“西欧型”とは異なる
研究では、8歳から70歳までのハザ族27名の糞便サンプルを解析しました。
その結果、次のことが明らかになりました。
- 非常に高い腸内細菌の多様性
- 男女で腸内細菌構成が大きく異なる
- 西欧で“善玉菌”とされるビフィズス菌がほぼ存在しない
特に興味深いのは、
一般にプロバイオティック製品に含まれるビフィズス菌がハザ族にはほとんど見られなかった点です。
これは、彼らが乳製品をほとんど摂取しない生活様式に関係していると考えられています。
それでも彼らに大腸疾患は少ない
報告によれば、ハザ族には
- 大腸癌
- クローン病
- 潰瘍性大腸炎
といった、西欧型食生活で増加している腸疾患がほとんど見られません。
これは「善玉菌が少ない=不健康」という単純な図式が成り立たない可能性を示唆しています。
「健康な腸内環境」とは何か
本研究の筆頭著者Alyssa Crittenden氏は、
「健康と見なされるものは、食生活によって定義が変わる可能性がある」
と述べています。
つまり、
腸内細菌は
✔ 食事
✔ 生活様式
✔ 環境
と共に進化し、適応している。
特定の菌が「絶対的に良い」と言えるわけではないのです。
プロバイオティクスは不要なのか?
ここで重要なのは、
「プロバイオティクスは無意味だ」という結論ではないこと。
抗生物質使用後や特定の疾患では、有用である可能性も示されています。
しかし、
- すべての人に
- 常に
- 同じ菌を
という考え方には慎重であるべきでしょう。
腸内環境は“個別性”が高いシステムです。
多様性という視点
研究はもう一つ重要な示唆を与えています。
腸内細菌叢の多様性の低さは、
- 炎症性腸疾患
- 肥満
- 代謝異常
と関連する可能性が指摘されています。
しかし、その“多様性”の形は一つではない。
ハザ族の腸内には、
西欧では疾患関連とみなされる菌種も存在していました。
それでも彼らは健康です。
これは、
菌そのものよりも、生態系としてのバランスが重要
である可能性を示しています。
まとめ
✔ 腸内細菌は食生活と共に進化する
✔ “善玉菌”の定義は絶対ではない
✔ 多様性が重要な鍵かもしれない
✔ プロバイオティクスは万能ではない
健康とは、
一つの菌を足すことではなく、
全体のバランスを整えること。
その視点が、これからますます重要になるでしょう。



