
目次
椎間板の変性で痛みは出るのか
「椎間板が変性していますね」
腰痛の説明で、よく聞く言葉です。
ですが…
本当にそれが痛みの原因なのでしょうか?
そもそも椎間板は痛みを感じるのか
健康な椎間板の内部には、基本的に痛みを感じるセンサー(侵害受容器)は存在しません。
損傷を受けた椎間板には、血管とともに神経(椎骨洞神経)が侵入すると言われています。
しかし、臨床の経過を見ていると、
「侵入した侵害受容器が常に痛みを発生させている」
と考えるには無理があるケースが多いのです。
研究が示す意外な事実
① 5年間の追跡調査
腰痛のない健常者41名を対象に、5年間MRIで椎間板を追跡した研究では、
- 重い物を持つ
- 運搬作業
- 腰の回旋
- 前屈動作
といった「危険」とされてきた動作と、腰痛発症率は関連がありませんでした。
むしろ、
椎間板変性がある人のほうが腰痛発症率は低かった
という結果が示されています。
② 一卵性双生児の研究
男性一卵性双生児115組を対象にMRIで調査した研究では、
椎間板変性は
物理的負荷よりも遺伝的要因の影響が強い
ことが示されています。
つまり、
「使いすぎたから変性した」という単純な話ではないのです。
③ 物理的負荷が強い人ほど健康?
さらに、
物理的負荷が強くかかる環境にある人のほうが、椎間板がより健康的だった
という報告もあります。
従来の
「負荷 → 変性 → 痛み」
という図式は、必ずしも成り立たないのです。
年齢と腰痛の関係
もし椎間板変性が痛みの主因であるなら、
年齢とともに腰痛有病率は上昇し続けるはずです。
しかし実際には、
腰痛の有病率は50代をピークに徐々に低下していきます。
変性は増えていくのに、痛みは減っていく。
ここにも矛盾があります。
治療の現実
椎間板変性が原因だと言いながら、
実際の治療は
- 牽引
- マッサージ
- 運動療法
など、椎間板そのものに直接アプローチしない方法が中心です。
それでも改善する人がいる。
ということは――
痛みの主因は別にあると考えるほうが自然ではないでしょうか。
専門家の認識
「椎間板変性を腰痛の主因と考える外科医は23%しかいない」
という報告もあります。
定説とされているものでも、
常に正しいとは限りません。
私の考え
椎間板の変性は、
年齢とともに生じる“自然な変化”である可能性が高い。
痛みの多くは、
- 筋・筋膜
- 軟部組織の侵害受容器
- 神経の感受性の変化
といった機能的要因で説明できるケースが多いと考えています。
「変性=痛み」
その図式を一度、見直してみる価値はあるのではないでしょうか。



