
50代男性の方が来院されました。
3ヶ月前にお米の袋を持ち上げてから右下肢に痛みとしびれが出現し、当院受診時には痛みのため足を引きずっている状態でした。
3回の施術後には通常歩行が可能となり、痛みは軽度残存するのみとなりました。現在は自然軽減の過程にあります。
「神経が圧迫されているのでは」という不安
この方は強く「坐骨神経が圧迫されているのではないか」と不安を訴えていました。
しかし、ここで重要なのは次の点です。
健康な神経は、単純に圧迫されただけでは痛みやしびれを発生させません。
神経の役割は、末端の受容器(センサー)が受け取った情報を電気信号に変換し、中枢へ伝達することです。
神経の途中が勝手に興奮して信号を発生させることは通常ありません。
神経は「発電装置」ではない
電気コードを途中で押したり叩いたりしても、電気が新たに発生することはありません。
同様に、神経も単なる伝導路です。
もちろん、重度の損傷や炎症があれば別ですが、日常動作レベルでの一時的な負荷で「神経が潰れている」という状態になることは一般的ではありません。
実際に起きていること
この方の場合、重い物を持ち上げた際に関節や軟部組織に存在する受容器が侵害刺激として情報を受け取りました。
その結果、
- 下肢への放散痛
- しびれ様感覚
として出現したと考えられます。
つまり、
原因=神経の圧迫
ではなく
原因=受容器の過敏反応
である可能性が高いケースです。
坐骨神経痛という言葉の落とし穴
「坐骨神経痛」という診断名は症状名であり、原因名ではありません。
坐骨神経の走行に沿って痛みやしびれが出ている状態を指しているだけです。
原因が
- 椎間板由来
- 関節由来
- 筋・筋膜由来
- 受容器の機能異常
のどれであるかは、個別に評価する必要があります。
まとめ
- 神経は基本的に信号の伝導路である
- 単純な圧迫だけで痛みやしびれは生じない
- 坐骨神経痛は「症状名」であり「原因名」ではない
- 多くは受容器レベルの反応で説明できる
「神経が潰れている」と思い込むことで、不安が増幅し、痛みが長引くこともあります。
構造だけでなく、機能という視点から評価することが重要です。



