
令和八年二月八日、日本の慢性痛治療に大きな足跡を残された
加茂淳先生が急逝されました。
心より哀悼の意を表します。
私は先生に直接お会いしたことはありません。
けれども、私の臨床に与えた影響は計り知れないものがあります。
出会う前の違和感
私が臨床を続ける中で、ずっと拭えなかった疑問がありました。
画像所見と症状が一致しない。
「異常なし」と言われても、確かに痛みやしびれは存在する。
骨の変形や神経圧迫だけでは説明できない症例が、あまりにも多い。
けれども、それをどう整理すればよいのか分からない。
どこかに答えがあるはずだと感じながらも、明確な言語を持てずにいました。
視点が変わった瞬間
いつだったか、SNSだったか、ある先生の投稿だったか…。
はっきりとは覚えていません。
ただ、そこで先生のお名前と考え方に触れました。
筋膜性疼痛症候群という概念。
筋・筋膜由来の関連症状という視点。
それを読み進めたとき、
それまで抱えていた疑問が一気に晴れたのを今でも覚えています。
ああ、やはりそうだったのか。
臨床で感じていた違和感が、言葉になった瞬間でした。
臨床での確信
その後、実際に筋膜由来の症状を丁寧に評価し、
関連痛を確認し、反応を追っていく。
再現性がありました。
説明がつかなかった症例に、筋道が通り始めました。
私の患者さんの中にも、先生の診療を受けた方が何人かいらっしゃいます。
その存在もまた、私にとって確かな後押しとなりました。
停滞するのか、それとも
第一人者が去られたことで、日本の慢性痛治療は停滞するのでしょうか。
私は、そうは思いません。
思想は個人から始まりますが、
一定の臨界点を越えると文化になります。
筋膜性疼痛症候群という視点は、
もはや一部の理論ではなく、現場で活かされる臨床言語になりつつあります。
継ぐのは、私たち現場の実践者です。
これからも
先生に直接お会いすることは叶いませんでしたが、
その考え方に出会えたことに心から感謝しています。
私はこれからも、
目の前の一人ひとりの痛みに向き合い続けます。
静かに、しかし確実に。
それが、私にできる継承だと思っています。


