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「この痛みの原因はなんですか?」と考えてしまうあなたへ
「この痛みの原因はなんですか?」
「なぜ筋肉が痛みだしたのですか?」
これは本当によく聞かれる言葉です。
つらい痛みがあるとき、理由を知りたくなるのはとても自然なこと。
むしろ当然の反応かもしれません。
ただ少し意外かもしれませんが、
原因を追求しすぎることが、かえって痛みを長引かせている可能性もあるのです。
原因を探しすぎることで起こる“見えない影響”
原因には結果がある。
確かにその通りです。
ですが、痛みを気にするあまり、
自分で痛みを強化してしまっているのではないかと思われる方が、実際に少なくありません。
この業界に入って20年近くになりますが、
原因を追求することが、そのまま治癒につながるとは限らない——
そんな場面を何度も見てきました。
たとえば日々の臨床では、こんな言葉をよく耳にします。
- 「特定の動作をしていたから悪くなったでしょうか?」
- 「同じ姿勢を続けたのがいけないのでしょうか?」
- 「運動のしすぎでしょうか?」
- 「なぜ痛みが出ているのでしょうか?」
もちろん大切な視点ではあります。
ただ、来る日も来る日も痛みのことばかりを考えている方は、
経過が思わしくないケースが多い——そんな印象もあります。
ここで一度、立ち止まってみてください。
「原因を知ること」と「良くなること」は、必ずしも同じではないのです。
痛みは“損傷の結果”だけではないという視点
「痛みを知る」という意味では、
いくつか知っておいて損はないことがあります。
- 日本の痛み医療は海外と比べてまだ発展途上な部分があること
- 画像上で神経を圧迫していても、必ずしも痛みになるわけではないこと
- 椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症は、手術でも保存療法でも数年後の結果に大きな差がないというデータがあること
こうした知識は、
「今の痛み=壊れているからだ」と決めつけなくていい、という安心につながります。
実際に、痛みのメカニズムを理解するだけで、
症状が軽くなる方も珍しくありません。
臨床的にも、痛みは脳が“危険かもしれない”と判断したときに強まるという考え方が広がっています。
たとえば、Moseleyらによる研究では、
痛みに対する教育(Pain Neuroscience Education)によって痛みや恐怖が軽減する傾向が示唆されています。
ただし、これはすべての人に同じように当てはまるわけではなく、
研究規模や個人差といった限界もあります。
それでも少なくとも、
痛み=単純な身体の異常だけではないという視点は、臨床的にも重要です。
思い込みが痛みを強めることもある
思い込みは、時に痛みを強化します。
「◯◯病」
この病名にとらわれてから、
つらさが増してしまう方も少なくありません。
- 私は◯◯病だから
- 治すにはどうすればいいのか
- 悪化しないようにするにはどうすればいいのか
こうして不安と恐怖の中で、
痛みや病名ばかりを追いかけてしまう。
心当たりはないでしょうか。
「こうなってしまうかもしれない」
「悪くなるに違いない」
そう強く思うほど、体はその方向に反応しやすくなることがあります。
少し意外かもしれませんが、
痛みを説明されたあとに、かえって痛みが増した経験がある方は少なくないのです。
これは、脳が危険を強く意識し、
体を守ろうとして痛みを強めてしまう反応とも考えられています。
なかなか良くならないときの向き合い方
なかなか良くならないと、
気持ちが落ち込んだり、暗くなったりすることもありますよね。
それも自然なことです。
そんなときは無理に前向きになろうとせず、
「そんなものかもしれない」
「思い通りにならないこともある」
と、一度受け止めてみる。
そして
「私は◯◯病だから」と決めつけすぎず、
少し距離を取ってみることも大切かもしれません。
安心してください。変化は起こり得ます
ここまで読むと、
「じゃあどうすればいいの?」と感じるかもしれません。
大丈夫です。
痛みは固定されたものではなく、
捉え方や安心感によって変化していくことがあるのです。
すぐに何かを大きく変える必要はありません。
まずは、
「原因を探しすぎていないか?」
と少しだけ振り返ってみる。
それだけでも十分な一歩です。
できそうなことから、少しだけ
もし余裕があれば、
- 痛みのことを考える時間を少し減らしてみる
- 「今できていること」に目を向けてみる
- 病名から少し距離を置いてみる
そんな小さな工夫から始めてみてもいいかもしれません。
無理に変わろうとしなくて大丈夫です。
少しずつ、
体と脳に「安全だよ」と伝えていく。
その積み重ねが、変化につながることがあります。
もし、ひとりで考えていると不安が強くなってしまう場合や、
「この痛みとの向き合い方がよく分からない」と感じるときは、
無理に抱え込まず、専門家と一緒に整理していくという選択もあります。
当院では、単に身体だけを見るのではなく、
「なぜ痛みが続いているのか」「どうすれば安心して動けるのか」といった視点も大切にしています。
原因を探し続けるのではなく、
安心して日常を取り戻していくことを一緒に考えていきます。
必要なタイミングで、思い出していただければ十分です。





