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自律訓練法とは
自律訓練法は、1932年にドイツの精神科医シュルツによって考案されたリラクセーション法です。
自己催眠法の一種とされ、心と体を落ち着かせ、自律神経のバランスを整える目的で用いられています。
ストレスの軽減、疲労回復、不安感の緩和、睡眠の質の改善などが期待されており、現在でも医療や心理分野で活用されています。
体の痛みというと、「骨のゆがみ」や「関節の変形」をイメージされることが多いのですが、実際には筋肉や筋膜の緊張が関係しているケースも少なくありません。
特に慢性的な肩こりや腰痛では、筋膜性疼痛症候群(MPS)のように、筋肉や筋膜の過敏状態が痛みに関与していることがあります。
そして筋肉は、単に身体の使い方だけで緊張するわけではありません。
不安、ストレス、警戒感、我慢の続く生活などによっても、無意識に力が入り続けることがあります。
つまり、慢性的な痛みを改善していくためには、「筋肉そのもの」だけではなく、緊張を作り出している脳や神経系にも同時にアプローチしていくことが大切になる場合があります。
少し意外かもしれませんが、身体が「もう警戒しなくて大丈夫」と感じ始めることで、痛みがやわらいでいくこともあります。
自律訓練法は、その“安心できる状態”を身体に学習させていく方法の一つと言えます。
自律訓練法で期待される効果
自律訓練法を続けることで、以下のような変化がみられることがあります。
- 心身の疲労感の軽減
- 気持ちの安定
- 体の緊張や痛みの緩和
- 睡眠の質の改善
- 集中しやすくなる
- 自分の状態に気づきやすくなる
もちろん、すべての症状が自律訓練法だけで改善するわけではありません。
ただ、「常に力が入っている状態」から少し抜け出せるだけでも、体は変わり始めることがあります。
痛みに対する自律訓練法の考え方
慢性的な痛みでは、筋肉や神経だけでなく、「脳が危険を感じ続けている状態」が関係していることもあります。
近年では、痛みは単純な損傷の問題だけではなく、ストレスや不安、注意の向き方などの影響も受けることがわかってきています。
そのため、自律訓練法のように“安全感”を身体に学習させるアプローチは、痛みのケアの一つとして役立つ可能性があります。
実際に、リラクセーション法や自律訓練法が、不安や慢性疼痛の軽減に役立つ傾向を示した研究も報告されています。
大切なのは、「無理に治そう」と力むことではなく、まず身体が安心できる時間を作っていくことかもしれません。
自律訓練法をおすすめしにくいケース
自律訓練法は安全な方法ですが、状態によっては慎重に行ったほうが良い場合もあります。
強い不安や精神症状がある場合
自律訓練法では、自分の内側の感覚に意識を向けていきます。
そのため、強い不安や混乱、現実感の低下がある時期には、かえってつらさが増すことがあります。
統合失調症や双極性障害などで症状が不安定な場合は、自己判断で無理に行わず、主治医や専門家に相談しながら進めることが大切です。
「うまくやらなければ」と頑張りすぎてしまう場合
真面目な方ほど、「ちゃんとリラックスしなきゃ」と努力しすぎることがあります。
ですが、自律訓練法は“頑張って成功させるもの”ではありません。
うまくできない感覚がストレスになる場合は、散歩や呼吸法など、もっと自然に安心できる方法のほうが合うこともあります。
小さなお子さんには難しいことがあります
自律訓練法は、言葉を使って身体感覚をイメージする方法です。
そのため、幼い子どもでは理解や集中が難しい場合があります。
自律訓練法のやり方
① 楽な姿勢をとる
仰向けになるか、椅子にゆったり座ります。
できるだけ身体に力が入らない姿勢を選びましょう。
② 深呼吸を数回行う
腹式呼吸で、ゆっくり3〜4回呼吸します。
「しっかり吸う」よりも、「ゆっくり吐く」ことを意識すると落ち着きやすくなります。
③ 公式を心の中で唱える
気持ちが少し落ち着いてきたら、以下の言葉をゆっくり心の中で繰り返します。
- 第一公式:「手足が重たい」
- 第二公式:「手足が温かい」
- 第三公式:「心臓が静かに脈打っている」
- 第四公式:「呼吸が楽にできる」
- 第五公式:「お腹が温かい」
- 第六公式:「おでこが涼しい」
最初は第一・第二公式だけでも十分です。
「感じよう」と頑張るよりも、ぼんやりイメージする程度で大丈夫です。

終わるときは「消去動作」を行う
自律訓練法のあとに急に立ち上がると、ぼんやり感や脱力感が残ることがあります。
終わるときは、
- 軽く背伸びをする
- 手足を動かす
- 屈伸を数回する
などの「消去動作」を行い、身体を日常モードに戻しましょう。
ただし、そのまま眠る場合は無理に行う必要はありません。
自律訓練法は“うまくやる”より“続けられる”ことが大切
自律訓練法は、最初から深いリラックス状態に入れるとは限りません。
「これで合っているのかな?」
そんな感覚から始まる方も多いです。
ですが、繰り返すうちに少しずつ身体が安心を覚えていくことがあります。
大切なのは、完璧にやることではなく、“安心できる時間”を身体に経験させることなのかもしれません。
自律訓練法を最速で習得するには
自律訓練法を一人だけで習得しようとしても、「これで合っているのかわからない」と途中でやめてしまう方は少なくありません。
特に、これまで催眠状態や深いリラックス状態を体験したことがない場合、“力が抜けている感覚”そのものがわかりにくいことがあります。
そのため、自律訓練法をできるだけ早く習得したい場合は、まず他者催眠によって深いリラックス状態を一度体験し、その状態の中で自律訓練法を練習する方法が有効です。
実際には、
- 身体の力が抜ける感覚
- 意識を内側に向ける感覚
- 暗示を自然に受け取る感覚
を一度体験しておくことで、その後の自己練習がスムーズになります。
少し意外かもしれませんが、「リラックスを頑張って作る」のではなく、“リラックスした状態を身体に覚えさせる”ほうが、自律訓練法は習得しやすくなることがあります。





