「異常なし」と言われたのに痛い理由をわかりやすく解説します|慢性痛の本当の考え方

「異常なし」と言われたのに痛い…その違和感

病院で検査を受けて、「特に異常はありません」と言われた。
それなのに、痛みは確かにある。

「気のせいなのかもしれない」
「どこも悪くないなら、なぜこんなに辛いのか」

こうした戸惑いは、とてもよくあるものです。
そしてまずお伝えしたいのは、その痛みは“おかしくない”ということです。


一般的に考えられている「痛み=損傷」という前提

我が国では多くの場合、痛みは「体のどこかが壊れているサイン」と考えられています。
いわゆる「損傷モデル」と呼ばれる考え方です。

確かに、ケガや炎症があるときにはこの考え方は当てはまります。
しかし、痛みが長く続く場合は少し事情が変わってきます。

少し意外かもしれませんが、
痛みは必ずしも損傷の大きさと一致しません。


痛みは「脳の予測」と安全性で変わる

近年では、痛みは単なる損傷の結果ではなく、
脳が「今は危険かどうか」を判断したうえで生じると考えられています。

そしてその判断材料は、ひとつではありません。

例えば、

・生物学的な要素(筋肉や関節の状態、炎症など)
・心理的な要素(不安や恐怖、「また痛くなるかも」という予測)
・社会的な要素(仕事のストレス、人間関係、生活の満足度など)

こうしたいくつかの要素を、脳がまとめて評価しています。
そのため、「体はそこまで悪くないのに痛い」という状態も起こりえます。
これは「気のせい」という意味ではなく、体を守るための自然な働きです。

少し意外かもしれませんが、
体の状態だけで痛みが決まっているわけではない、ということです。

このような考え方は「生物心理社会モデル(BPSモデル)」と呼ばれ、
現在の慢性痛の理解では重要な視点とされています。

つまり、検査で異常が見つからなくても、
脳が警戒していれば痛みが続くことは十分にありえます。

ここで一度立ち止まってみてください。
痛み=壊れている証拠とは限らない、という視点です。
ここが少し変わるだけでも、体の感じ方は変わっていくことがあります。


臨床でよくあるケース

例えば、最初は軽い腰痛だった方が、
「また痛くなるのでは」と不安を感じるようになり、
次第に動くこと自体が怖くなっていく。

すると、体はどんどん過敏になり、
わずかな刺激でも痛みを感じやすくなります。

実際には大きな損傷がなくても、
「守ろうとする反応」が強く出ている状態です。

こうしたケースは珍しいものではなく、
むしろ慢性痛ではよく見られる経過です。


海外では進んでいる「痛みの捉え方」

現在、海外ではこのBPSモデルに基づいた理解が広がっています。
単に「どこが悪いか」ではなく、
「なぜ痛みが続いているのか」を多面的に捉える方向です。

一方で日本では、
いまだに損傷モデル中心の説明が多いのも現状です。

さらに、日本の医学教育では
「痛みそのもの」を体系的に学ぶ機会が限られているとも言われています。

そのため、「異常なし=問題なし」と説明され、
患者さんが置き去りになってしまうこともあります。


論文からの補足

慢性痛に関する研究では、
痛みの強さは組織の状態だけでなく、心理社会的要因とも関連することが示唆されています。

例えば、
生物心理社会モデルに基づいたレビューでは、
不安や恐怖、認知が痛みの持続に関与する傾向があると報告されています。

ただし、これらの研究の多くは主観評価を含むため、
個人差や状況による影響も大きい点には注意が必要です。

それでも臨床的には、
「体だけを見ても説明できない痛みがある」という理解を支える材料にはなっています。


痛みがあっても、大丈夫です

ここまで読んで、少し安心できた方もいるかもしれません。

痛みがある=壊れている、ではない可能性がある。
これはとても大切な視点です。

そしてもうひとつ、知っておいていただきたいことがあります。

体は、状況に応じて変わっていく力を持っています。
痛みが続いていると、その感覚に引っ張られてしまいがちですが、
実際には少しずつ変化が起きていることも少なくありません。

少し意外かもしれませんが、
「安心できる経験」や「大丈夫かもしれないという感覚」が増えていくことで、
体の反応はやわらいでいくことがあります。

すぐに大きく変わるわけではなくても、
理解が変わることで、感じ方や過ごし方に少しずつ余裕が生まれてくる。

その積み重ねが、結果として回復につながっていくこともあります。


これからできること

まずは、「痛みの意味」を少しだけ見直してみてください。

無理に頑張る必要はありませんが、
「少しなら動いても大丈夫かもしれない」と感じられる範囲で動くこと。

そして、
安心できる情報や環境に触れることも大切です。

痛みは一つのサインではありますが、
それが必ずしも危険を意味するわけではない。

この視点が、回復のきっかけになることもあります。


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