
目次
人の「思い込み」は、想像以上に身体へ影響を与えます。
たとえば、
「腰椎椎間板ヘルニアで神経が圧迫されているから痛い」と強く信じて治療を受ける場合と、
- 椎間板ヘルニアは症状のない健常者にも多く見られること
- 神経の“圧迫=痛み”と単純には証明されていないこと
- 実際には筋肉・靭帯・皮膚などにある痛みのセンサー(ポリモーダル受容器)の興奮が関与しているケースが多いこと
こうした事実を理解したうえで治療を受ける場合とでは、反応や経過が大きく異なることがあります。
臨床の現場で多くの方をみていると、これは強く感じるところです。
もちろん、そこにはプラシーボ効果も関わっています。
思い込みで“やけど”ができる?
Herbert Spiegel(コロンビア大学医学部)は、催眠状態の被験者に対し「これから額にアイロンを当てる」と告げ、実際には鉛筆の先で触れただけ、という実験を行いました。
すると被験者は「熱い!」と叫び、額には水疱が形成され、かさぶたまで生じたと報告されています。
「熱い」と信じることで、身体がその反応を起こしてしまったのです。
不思議に感じますが、これは心身のつながりを象徴する例といえるでしょう。
プラシーボとノーシーボ
- 「治る」と信じる → プラシーボ効果
- 「治らない」と思い込む → ノーシーボ効果
思い込みは、どちらの方向にも働きます。
もし
「もう治らない」
「年齢だから仕方ない」
「ヘルニアだから一生付き合うしかない」
そんな前提を無意識に抱えているなら、それ自体が回復を妨げている可能性もあります。
多くの痛みは“損傷”だけでは説明できない
体の痛みやしびれの多くは、筋肉や靭帯、皮膚などの軟部組織由来であることが少なくありません。
もちろん、すべてがそれで説明できるわけではありませんが、
実際には
「痛みが少し軽減したことをきっかけに、回復の流れに乗る」
という方が非常に多いのも事実です。
その鍵のひとつが、本人の理解と主体的な参加です。
知識は“鎮痛薬”になることがある
痛みに対する正しい知識を持つだけで、症状が改善していく方がいます。
それは決して精神論ではありません。
International Association for the Study of Painは痛みを次のように定義しています。
不快な感覚性・情動性の体験であり、実際の組織損傷、もしくはそのような損傷があると表現される状態に関連するもの。
痛みは“体験”です。
単なる組織の問題ではなく、脳と神経の働きを含んだ現象です。
まとめ
思い込みは、
回復を加速させることもあれば、
ブレーキになることもあります。
もし思い込みが強いと感じるなら、
まずは痛みについて学んでみてください。
知ることは、安心につながり、
安心は、痛みをやわらげます。
そして、治療は「受けるもの」ではなく、
自ら参加するプロセスです。
その一歩が、回復への流れをつくります。



