
下行性疼痛抑制系という視点
ぎっくり腰は同じように見えても、
- すぐに楽になる人
- 強い痛みに苦しむ人
- なかなか引かない人
がいます。
レントゲン所見に大きな差がなくても、
痛みの強さや回復速度は人によって違う。
その差を生む一因が、下行性疼痛抑制系(かこうせいとうつうよくせいけい)の働きです。
私たちの体には、痛みを伝える回路だけでなく、
痛みを抑える神経回路も備わっています。
この抑制機構の機能を評価する概念が
CPM(Conditioned Pain Modulation)です。
CPMがしっかり働いている人は、
同じ刺激でも痛みが過剰に広がりにくい。
逆に、CPMが低下している状態では、
痛みは強く、長く感じられやすくなります。
痛みには「アクセル」と「ブレーキ」がある
私たちの体には、
- 痛みを伝える回路(上行系)
- 痛みを抑える回路(下行性疼痛抑制系)
の両方が備わっています。
この“ブレーキ”がしっかり働けば、
同じ刺激でも痛みは過剰に広がりません。
しかしブレーキが弱っていると、
- 痛みが強く感じられる
- 防御反応が過剰になる
- 筋緊張が持続する
- 回復が遅れやすい
といった状態になります。
クシャミは単なるきっかけにすぎません。
問題は、その人の神経系がどれだけ「抑えられる状態」にあるかです。
下行性疼痛抑制系を弱らせる要因
この抑制系は、さまざまな影響を受けます。
- 睡眠不足
- 慢性ストレス
- 既往の慢性痛
- 不安傾向
- うつ状態
そして――
栄養状態の低下
栄養と痛みのブレーキ
下行性疼痛抑制系では、
- セロトニン
- ノルアドレナリン
- 内因性オピオイド
などの神経伝達物質が関与します。
これらの合成には、
- タンパク質
- ビタミンB群
- 鉄
- マグネシウム
- 亜鉛
といった栄養素が必要です。
つまり、
栄養不足は、痛みを抑える材料不足になり得る
ということです。
臨床で感じること
- 朝食を抜く習慣
- 極端なダイエット
- 高齢による低栄養
- 加工食品中心の食生活
こうした背景を持つ方は、
痛みが強く、長引きやすい傾向があります。
もちろん単純化はできません。
しかし、
構造
+ 神経系
+ 心理社会的要因
+ 栄養
という立体的な視点で見ると、
「なぜ同じぎっくり腰でも違うのか」が見えてきます。
ぎっくり腰は“きっかけ”
クシャミや中腰動作はトリガーです。
本質は、
その人の神経系がどれだけ安定しているか
ここにあります。
痛みを必要以上に恐れる必要はありません。
同時に、「体の土台」を整えることも大切です。
ぎっくり腰は、
体からの一つのサインなのかもしれません。



