
アメリカで行われた大規模疫学研究により、興味深い事実が報告されています。
Annals of Internal Medicineに掲載された研究では、症候性変形性膝関節症(膝の痛みを伴うもの)の増加が、年齢や肥満とどの程度関連しているかを検討しました。
その結果、次のような傾向が明らかになりました。
目次
■ 膝の痛みは大幅に増加している
NHANES研究参加者において、年齢およびBMIを調整した膝痛の有病率は、1974年から1994年の20年間で約65%増加していました。
しかもこの増加は、
- 非ヒスパニック系白人
- メキシコ系アメリカ人
- アフリカ系アメリカ人女性
いずれの集団でも確認されています。
つまり、「高齢化」や「肥満」だけでは説明できない増加だったのです。
■ しかし、レントゲン所見は増えていない
一方、FOA研究参加者におけるX線上の変形性膝関節症の有病率には有意な増加は見られませんでした。
年齢・BMIを補正した解析では、むしろ10~25%減少しているという結果さえ示されています。
何を意味しているのか?
まとめると、
- 膝の痛みはこの20年間で大幅に増えている
- しかし、レントゲン上の変形は増えていない
- 肥満は原因のごく一部に過ぎない
ということになります。
つまり、
「画像上の変形=痛みの原因」ではない可能性が高い
ということです。
痛みは“構造”だけでは説明できない
膝の痛みが増えているにもかかわらず、構造的変化が増えていない。
この事実は、痛みが単なる「軟骨のすり減り」や「骨の変形」だけで決まるものではないことを示唆しています。
近年では、
- 筋機能の低下
- 神経系の感受性変化
- ストレスや心理社会的要因
- 活動量の変化
など、多面的な視点で膝痛を理解する必要性が強調されています。
当院で大切にしている視点
レントゲンに異常がないのに痛い。
それは決して「気のせい」でも「年齢のせい」でもありません。
構造だけでなく、
- 筋肉や軟部組織の状態
- 動作パターン
- 神経系の過敏化
- 生活背景
を総合的に評価することで、改善の糸口が見つかるケースは少なくありません。
参考文献
Felson DT, et al. Annals of Internal Medicine.



