
目次
痛みが続くと「どこか悪いのでは」と感じてしまう
「この腰痛、何か原因があるのでは…」
「悪化しているサインなのではないか」
そう感じるのは、とても自然なことです。
痛みが長く続くほど、不安は大きくなります。
検査で異常が見つからない場合でも、
「何か見落とされているのでは」と考えてしまうこともあります。
「痛み=損傷」という考えに縛られていないでしょうか
一般的に、痛みは
「体が壊れているサイン」
と考えられています。
もちろん、それが当てはまる場面もあります。
ただ慢性痛の場合、この考えだけでは説明がつかないことも少なくありません。
少し意外かもしれませんが、
痛みは“体の状態そのもの”だけで決まっているわけではないのです。
オーストラリアのビクトリア州で行われた「腰痛に負けるな」キャンペーン
オーストラリアのビクトリア州で行われた
「腰痛に負けるな(Back Pain: Don’t Take It Lying Down)」というキャンペーンは、
州全体を対象にした非常に大規模な取り組みでした。
具体的には、
- テレビ・新聞・ラジオなどのマスメディア
- 一般向けの小冊子の配布
- 医療現場での情報提供
といった多角的な方法で、「腰痛の正しい理解」を広めていきました。
伝えられていた内容はシンプルですが重要です。
- 腰痛=必ずしも深刻な損傷ではない
- 安静にしすぎる必要はない
- 可能な範囲で動くことが回復を助ける
つまり、「痛みの捉え方」を社会全体で見直す試みでした。
医療費削減につながったという報告
このキャンペーンの特徴は、その“結果”にもあります。
実施後には、
- 医療機関の受診行動の変化
- 不必要な検査や治療の減少
などが見られ、結果として医療費の抑制につながったことが報告されています。
これは個人レベルではなく、
州という広い単位で変化が見られた点が非常に興味深いところです。
ただし、この結果には注意点もあります。
研究の多くは観察的なものであり、
他の要因の影響を完全に除外することは難しいとされています。
そのため、「必ずこのキャンペーンだけの効果」と断定はできません。
それでも臨床的には、
「痛みの理解が変わることで行動が変わる」という現象はよく見られます。
痛みは脳の“解釈”によって変わることがある
近年の研究では、痛みは
脳が「危険かもしれない」と判断した結果として生じる感覚
と考えられています。
つまり、
- 不安や恐怖が強い → 痛みが強くなりやすい
- 安全だと感じられる → 痛みが和らぐことがある
という変化が起こることがあります。
ここで一度、少し立ち止まってみてください。
「痛み=壊れている証拠」と決めつけなくてもいいのかもしれません。
臨床で実際に起こる変化
現場では、こうした変化は珍しくありません。
「動いたら悪くなる」と感じていた方が、
- 痛みの仕組みを理解し
- 少しずつ動く経験を積むことで
徐々に痛みが軽減していくことがあります。
これは単なる気の問題ではなく、
「脳が安全を再学習した」と考えられるケースです。
痛みは変えられる可能性があります
ここで大切なのは、
「痛みは本物である」という点です。
決して気のせいではありません。
ただ、その仕組みが少し複雑で、
身体だけでなく脳の働きも関係しているということです。
だからこそ、
- 理解が深まる
- 不安が軽くなる
- 行動が変わる
こうした流れの中で、痛みが変化していくことがあります。
大丈夫です。
これは臨床でもよく見られる自然な変化です。
まずは見方を少しだけ変えてみる
最初から大きく変える必要はありません。
- 「必ずしも壊れているわけではないかもしれない」
- 「脳の反応も関係しているかもしれない」
このくらいの捉え方で十分です。
そこから少しずつ、
身体との付き合い方が変わっていくこともあります。
無理をする必要はありません。
ただ、選択肢があることを知っておくことが大切です。
まとめ
オーストラリアのビクトリア州で行われた
「腰痛に負けるな」キャンペーンは、
- マスメディアや小冊子を活用した州規模の大規模介入であり
- 痛みの捉え方を社会に広め
- 医療費の抑制にもつながった可能性がある
という点で、非常に示唆的な取り組みです。
痛みは単なる損傷の問題ではなく、
脳の解釈や不安とも深く関わっています。
だからこそ、
「別の見方を持つこと」が回復のきっかけになることもあります。





