右手の痛み・しびれ=すぐに「神経の異常」ではありません

さいたま市よりお越しのAさんは、娘さんのご紹介で来院されました。

1週間ほど前から、右腕全体に重だるさが出現。
症状が出る直前には、草むしりなど手をよく使う作業をされていたそうです。

首を動かすと右上肢に痛みが走る状態でしたが、詳しく観察すると――

  • 右の首から上肢にかけて広範囲の筋圧痛
  • 明確なトリガーポイントの存在
  • 神経脱落症状は認められず

という所見でした。


首を反らして腕に痛みが出る=神経痛?

よくある誤解のひとつに、

「首を反らすと腕に痛みが走る=神経が圧迫されている」

というものがあります。

しかし、生理学的には神経を圧迫しただけでは痛みは生じません。

痛みが発生するには、基本的に痛覚受容器(侵害受容器)の刺激が必要です。

もし神経自体から痛みが発生していると説明するなら、
「異所性興奮」という特殊なメカニズムを想定する必要があります。

横田敏勝先生著『臨床医のための痛みのメカニズム』では、

痛覚受容器を介さずに神経線維からインパルスが発生することを異所性興奮という。
それが生じやすいのは脱髄部や損傷神経の側芽・神経腫などであり、頻度は高くない。

と説明されています。

つまり、
単純な姿勢変化で生じる上肢痛の多くは、神経そのものの異常とは考えにくいのです。


「神経症状」とは何を指すのか

医学的に神経症状とは、

  • 筋力低下
  • 感覚鈍麻
  • 反射異常
  • 巧緻運動障害

といった神経脱落症状を指します。

電気信号の伝達がうまくいかない状態です。

主訴としては

  • 手が動かしづらい
  • ボタンが留めにくい
  • 細かい作業ができない

などが多くなります。

このような場合は頚髄症などを考慮し、
進行性であれば外科的対応を検討することもあります。


今回のケースはどうだったのか

Aさんは明確な神経脱落症状はなく、
筋由来の所見が中心でした。

適切な施術に非常によく反応し、
重だるさは速やかに改善。

来院時の不安そうな表情が、
明るい笑顔へと変わったのが印象的でした。

順調であれば、継続的な施術が不要になる可能性も十分あります。


「以前もヘルニア疑い」と言われたことがある

Aさんは過去にも同様の症状があり、
その際は「頚椎椎間板ヘルニアの疑い」と言われたそうです。

しかし、

  • 画像所見と症状は必ずしも一致しません
  • ヘルニアがあっても無症状の方は多数存在します

大切なのは、

今、何が痛みを生んでいるのかを正確に評価すること。


まとめ

右手の痛み・しびれが出たとき、

  • すぐに「神経がやられている」と思い込まないこと
  • 神経脱落症状があるかどうかを確認すること
  • 筋・軟部組織由来の可能性を見落とさないこと

これだけでも、不必要な不安は大きく減らせます。

痛みの正体を冷静に見極めれば、
身体はきちんと回復の道を選びます。

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