画像上の変化と症状は一致しない

和歌山の腰部脊柱管狭窄症に関する研究

和歌山在住の成人(21歳-97歳)1009名(男性335人、女性674人、平均年齢66.3歳)がレントゲン撮影により分析されました。
そのうち痛みなどの症状がある人は全体で9.3%(男性10.1%、女性8.9%)で、大多数の方はレントゲン画像上腰に脊柱管狭窄があっても無症状だったのです。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/m/pubmed/22796511/

腰部脊柱管狭窄症と症状の関連

神経を圧迫して痛みやしびれが出る。

これは一見最もそうな説明ではありますが、果たして本当にそうなのでしょうか。

1995年にボルボ賞を受賞した研究では、重度の腰痛及び坐骨神経痛を有する46名と、年齢、性別、危険因子(重いものを持つ、座ることが多いなど)を一致させた無症状の46名と比較しました。

無症状の46名をMRI撮影したところ、76%の人に椎間板ヘルニアが認められ、85%の人に何らかの椎間板異常が見つかったのです。
無症状、つまり痛みやしびれなどが全く無いにも関わらずです。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/m/pubmed/8747239/?i=2&from=boos%201995%20hernia

次に紹介する論文では、腰部脊柱管狭窄症の方100名をレントゲンや脊髄造影、CTで調べた結果、脊柱管の狭窄の程度と、痛みやしびれなどの症状は一致しなかったというものです。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=7638662

腰痛未経験でもMRI撮影すると76%に腰椎ヘルニアが見つかり、脊柱管が狭くても全く症状の無い人もいて、画像撮っても画像の変化と症状は一致しない。
手術してもプラシーボの70%に届かない。
手術を多く実施する地域の方が治療成績が悪い。

そうであれば椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症という病名そのものがおかしいなと思いませんか?

そんなに神経が圧迫に弱ければ座り仕事の方の坐骨神経、スポーツをする方の足底神経などはもっと障害を起こしてもよさそうなものですが、座る時間が長くて坐骨神経が麻痺したり、運動をしすぎて足底神経が麻痺したという話は聞きませんね。

生理学者の熊澤孝朗先生は著書「痛みを知る」の中で「神経線維は通常その末端の受容器からの信号を伝えるものであって、その途中が興奮を起こす様なことはありません。」と述べています。

もともと神経とは圧迫には強いですし、電気コードの様なものなので、圧迫したからといって受容器が無いので何も起こらないのです。

※極稀に麻痺になる方はいますが、症状は動かしにくい、触っているのが鈍い・わからないなどです。こういった症状がある場合、自己判断せずにすぐに病院に受診しましょう。

画像検査が増えるに従って新たな病名と患者が増えていっています。
そうなれば必然的に手術件数も増えるわけですが、こういった事実からヘルニアや脊柱管狭窄は考え直した方がいいのではないでしょうか。
このまま行けば社会保障費が膨らんでまともに生活できない日が来ます。

※MRI検査307%増加、オピオイド処方423%増加、硬膜外ブロック629%増加、手術(脊椎固定術)220%増加したが、転帰の改善は伴わなかった。
Deyo RA et al, J Am Board Fam Med, 2009

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